ガラスに直線の切り込みで小紋のような模様を付ける江戸切子は、その名のとおり江戸から東京へと伝わってきたカットガラスの技術だが、もとを辿ればヨーロッパのガラス装飾の技術に行き着く。ガラス面に絵画のようにリアルな図柄を刻む「グラヴィール技法」も、ヨーロッパで発展した技術だ。
ご紹介する本品は、そんな東西のガラス工芸の粋が融合した、宝石のような価値あるグラスである。
表面を覆い尽くす江戸切子の技法を凝らした「菊つなぎ」という紋様は、その細かさを見れば、どれだけ手が込んでいるかがわかる。そこに「グラヴィール技法」で描かれたアール・ヌーヴォー調の風雅なモチーフが浮かぶ。
春をイメージして緑を着せた器には雀が、夏に思いを馳せて瑠璃色を着せた器にはトンボが、器ごとに3つずつ削り出されている。創業97年を誇る江戸切子の堀口硝子と、スペインで学んだガラス作家の花岡和夫さんとによる、東西の技の共演だ。
また本品に採用された琥珀色のクリスタルは、多くのガラス製造家が夢見てきた幻のガラス。その色は、日本酒だけでなくウイスキーにもよく合う。
【今日の逸品】
江戸切子のぐい呑み
堀口硝子×川商
41,040円~(消費税8%込み)