■ボタンダウンシャツはポロ競技のために作られたもの
では、ネクタイなしのスタイルにふさわしいシャツとはどのようなものでしょうか? 筆者はやはり、カジュアルシャツの代表ともいえるボタンダウンシャツが最もふさわしいと思います。
ボタンダウンシャツは、ブルックス ブラザーズ社によって考案されました。ブルックス ブラザーズ社は、1818年ヘンリー・サンズ・ブルックスによって創業されたアメリカの名門紳士・婦人服専門店です。
ブルックス ブラザーズ ジャパンのホームページによると、ボタンダウンシャツを世に送り出したのは創業者の孫にあたるジョン・E・ブルックスで、1896年、「イギリスでポロ競技を観戦していた際に、選手のシャツの襟が風に揺れないようボタンで留められているのを見て、このデザインのヒントを得た」とあります。
ブルックス ブラザーズでは、このシャツのことを今でも「ボタンダウンポロカラーシャツ」(本国サイトではBOTTON-DOWN POLO SHIRT)と表記)と呼んで、その矜持(きょうじ)を保っています。
ブルックス ブラザーズといえばアイビーリーガー(アメリカ西海岸にある名門大学8校で組織されるアイビーリーグの学生・卒業生の総称)御用達の専門店で、ボタンダウンシャツはアイビーリーガーに愛用されたため、アメリカではビジネスシーンにも着用されるようになりました。
日本でも1960年代中頃のアイビーブーム以来、ボタンダウンシャツは根強い人気商品ではありますが、その成り立ちを考えると基本的にはカジュアルなシャツなので、私としては、スーツに合わせての着用はおすすめしていません。特に、第1ボタンの位置にボタンがふたつついているドゥエ・ボットーニのようなデザインのものは、スーツには着用しないほうがよいと思います。
余談になりますが、60年代前半のアメリカで高い人気を誇ったジョン・F・ケネディ元大統領の写真をこれまでたくさん見てきましたが、公の席でボタンダウンシャツを着ているものは1枚もありませんでした。アイビーリーガーとして有名なケネディ元大統領でも、ボタンダウンシャツはあくまでカジュアルなものだったのでしょう。
最後に、シャツの色柄の選び方ですが基本の白、ブルーの無地に、イエロー、ピンクの無地があれば着回しに重宝します.柄物を選ぶときはあまり大きな柄や、派手なストライプ、奇抜なデザインの物を選ばないことをおすすめします。シャツの柄が強いと、スーツやネクタイ、柄物のジャケットとケンカをしてしまい、着回しに苦労することになりますから、やはりスタンダードなものが一番だと思います。
文/高橋 純(髙橋洋服店4代目店主)
1949年、東京・銀座生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本洋服専門学校を経て、1976年、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションのビスポーク・テーラリングコースを日本人として初めて卒業する。『髙橋洋服店』は明治20年代に創業した、銀座で最も古い注文紳士服店。
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