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カジュアルな紳士の4大コート!それぞれの歴史と着こなし方を知る【銀座 老舗仕立て屋の着こなし講座14】

前回の記事「秋冬の紳士の必需品!押さえておきたいオーバーコート3つのタイプ」では、主に改まった場で着用するコートについてご紹介いたしました。

続いて今回は、ジャケット着用のセットアップスタイルや、よりカジュアルなスタイルに着用していただきたいコートとして、ポロコート、ピーコート、ダッフルコート、そしてトレンチコートについてお話ししたいと思います。

ここ数年、女性にも人気になっているトレンチコート。レインコートとして着用するなら、フォーマル以外のどんな洋服にも合わせられます。

ここ数年、女性にも人気になっているトレンチコート。レインコートとして着用するなら、フォーマル以外のどんな洋服にも合わせられます。

■1:ブルックス ブラザーズが名付けた「ポロコート」

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ポロコートの原型は19世紀の後半、イギリスのポロの選手が、競技の間の待ち時間に着用した「ウェイトコート(WAITCOAT)」にあります。20世紀に入ってアメリカのブルックス ブラザーズ社がこの形のコートを“ポロコート”と命名して発売して以来、この名が定着したと言われています。

当コラム第8回で、ボタンダウンシャツはブルックス ブラザーズ社によって考案され、同社では今でも「ボタンダウンポロカラーシャツ」とよんでいることをご紹介しました。ポロは日本ではあまりなじみのないスポーツですが、欧米のファッションに大きな影響を及ぼしているのがよくわかります。

さて、ポロコートですが、厚手のウールで作られた、膝が隠れる程度の長さのロングコートです。色はキャメルカラーのものが正式だとされています。

アルスターカラーと呼ばれる大きな襟、ダブルブレステッド6個ボタン、バックベルトと呼ばれる背中だけに施されたベルト、袖口には幅の広い折り返しが付いています。また、フレームド・パッチ&フラップというポケットが特徴的でしたが、最近は必ずしも見られなくなりました(※上写真は普通のフラップポケット仕様)。
ネクタイあり/なし、いずれのセットアップスタイルにもよくコーディネイトされますし、セーターにデニムパンツといった軽装の上にもお洒落に羽織っていただけます。

■2:英国海軍が採用した漁師の作業服「ピーコート」

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ピーコートは紺や黒の厚手の生地で作られた、やや変形のアルスターカラー、ダブルブレステッドのショートコートです。最近、男女を問わず若者たちの間で圧倒的な人気を誇っています。

もともとは19世紀末に英国海軍(ロイヤルネイビー)の艦上用コートとして誕生したと言われています。名前の由来は、オランダ語のピー(荒い紡毛生地)でできたジャケット「ピエッケル(PIJJEKKER)」がそのまま英語化されたもので、漁師たちも作業服として愛用していたようです。リーファージャケット(REEFER:海軍少尉候補生)、ウォッチコート(WATCH:甲板で見張りに立つ作業)、ブリッジコート(BRIDGE:艦橋)などの別名を持っていますが、すべて船に関係する名前です。

そもそもダブルブレステッドの誕生は、当コラム第5回でご紹介しましたように、船乗りが甲板でウォッチに立った時に、左から風が吹いている時は右前(男前)に合わせ、右から風が吹いている時は女前(左前)に合わせて、コートの中に風が入るのを防いだのが始まりと言われています。ピーコートには、身頃に縦に切られたマフポケットと言われる、手を温めるためのポケットなど随所に寒い海上での作業に適した仕様が残っています。

胸部の左右に作られたマフポケット。

胸部の左右に作られたマフポケット。

最近では、着丈が短く軽快に見える仕様のピーコートをよく見かけますが、本来はもう少し長めだったようです。このコートはその出自からしてカジュアル専用とご理解いただけると思いますが、ウールのコートの中でも最もカジュアルなものに属しています。セーターにトラウザーズやデニムパンツのアウターとしては最適ですが、スーツには全くマッチしません。ジャケットがコートの裾から顔を出さなければという条件付きで、せいぜいノーネクタイのカジュアルなジャケットのアウターとしてなら着用可、というところでしょうか。

■3:学生用のイメージが強い「ダッフルコート」も英国海軍採用品

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ダッフルコートといえば身頃と一体となったフード、釣り用の「浮き」をモチーフにしたフロントボタン(トグル)をロープでできたループで留める、お馴染みのデザインが特徴です。

トグルと呼ばれる、ダッフルコートに特徴的なフロントボタン。

トグルと呼ばれる、ダッフルコートに特徴的なフロントボタン。

ベルギーのアントワープ近郊のダッフルという地域で織られた厚手の紡毛織物で作られた、漁師の防寒コートがオリジナルです。フロントボタンを留めるときに重ねる生地を「打ち合い」と呼びますが、ダッフルコートは防寒のため、シングルブレステッドでも打ち合いが深く設定されています。

このコートも英国海軍(ロイヤルネイビー)が第二次世界大戦で北大西洋勤務者の防寒着として採用したものが、戦後に一般化したといわれています。

一時期、学生の間でブームになったため、若者のコートというイメージを持つ方もいらっしゃるでしょうが、この出自からしても、大人が着ても何らおかしくないコートです。ただし、ピーコートと同様、最もカジュアルなコートのひとつで、スーツやネクタイ着用のセットアップスタイルには不向きと言わざるを得ません。

■4:英国陸軍に採用された防水性の高いコート「トレンチコート」

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最後に、皆さまよくご存じのトレンチコートです。

第一次世界大戦当時、寒冷の欧州戦線で着用する防水性の高い防寒軍用コートとして開発されたものです。欧州戦線でたびたび発生した泥濘地での塹壕戦でこのコートが威力を発揮したため、塹壕=トレンチ(Trenchi)コートと呼ばれるようになって現在に至っています。

動きやすいようにゆったりした身幅と防寒に優れたダブルブレステッドで長めの着丈。脱着しやすいラグランスリーブ。首元までしっかり閉まり雨の侵入を防ぐコンバーチブル アルスターカラー。すべてのボタンを掛けた時に上前と下前のすき間からの雨の侵入を防ぐために右胸部に着けられたストームフラップ。肩にはエポレット(肩章)。共地で作られたベルトには手榴弾を下げるためのDリング。

腰のベルトにつけられた金属製のDリング。

腰のベルトにつけられた金属製のDリング。

背中には、一番濡れやすい肩のあたりを保護するために、身頃の上に被せて作られたヨーク。袖口からの雨風の侵入を食い止めるためのカフストラップなどなど。気候の悪い寒冷地での戦いに耐えうる様々な工夫は枚挙にいとまがありません。

そもそもオリジナルの素材は防水綿ギャバジンですが、バーバリー社とアクアスキュータム社のどちらが先に開発したのか、お互いに主張していて、いまだに決着はついていないようです。

ここまで存在感を増してしまったトレンチコートです、レインコートとして着用するならば、フォーマル以外のどのようなオケイジョンでも一向に差し支えないのではないでしょうか。スーツでもよし、セットアップスタイルでもよし、セーター&デニムパンツの上に羽織ってもよいと思います。

 

以上、カジュアル用のコート4種類の起源やディテールについて簡単にご説明してきましたが、いかがでしょうか?

現在一般のマーケットに出回っているコートは、ディテールが現代的にデフォルメされたものが多く、オリジナルからはかけ離れてしまっているものがほとんどです。しかし、その誕生の経緯、もともとの着用法をご理解いただけば、おのずからどのようなオケイジョンに、どのようなコーディネイトをすればよいのかご理解いただけると思います。

長年注文洋服店を営んできた私としては、近年の服装ルールの乱れは目に余るものがあります。20世紀のメンズファッションのトレンドセッター、イギリスのウィンザー公も「掟破り」で新しいトレンドを作りましたが、それは装いのルールに熟知していたからできたこと。ルールも知らずに間違ったことをするのは「掟破り」ではなく、ただの「無知」と思われても仕方がありません。

皆様にはぜひルールを理解した上で、お洒落を楽しんでいただきたいと思います。

文/高橋 純(髙橋洋服店4代目店主)
1949年、東京・銀座生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本洋服専門学校を経て、1976年、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションのビスポーク・テーラリングコースを日本人として初めて卒業する。『髙橋洋服店』は明治20年代に創業した、銀座で最も古い注文紳士服店。

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