文/鈴木拓也
病院で治らないのは「ほんとうの原因」があるから
下半身の広い範囲にかけ、しびれや痛みなどを感じる坐骨神経痛。
これに罹っている人は数百万人規模ともいわれ、わりとよく知られた症状である。
病院で診てもらっても、なかなか良くならず、「一生この症状と付き合っていくのだろうか……」と悩んでいる人も少なくない。
「病院の治療で改善しないのは、実は理由がある」。そう言うのは、さかいクリニックグループ代表の柔道整復師、酒井慎太郎さんだ。
酒井さんは、著書『図解 今すぐ治せる!坐骨神経痛』(Gakken https://hon.gakken.jp/book/2380225000)の中で、その理由を次のように記す。
その疑問に対する答えはシンプルです。一般的に行われている治療法はすべて「一時的に症状を軽減するだけの対症療法」に過ぎないからです。そして、坐骨神経痛の「ほんとうの原因」に適切なケアをしないうちに、症状がどんどん進行し、最終的に手術をすすめられる人がよくいらっしゃいます。 (本書26pより)
実は酒井さん自身も、過去に坐骨神経痛に苦しんで、自力で完治させた経験がある。さらに、経営するクリニックを訪れる坐骨神経痛の患者さんの、「99%は不調の改善・解消に成功」させた腕の持ち主でもある。
その酒井さんによれば、手術を受けても相変わらず症状が残る人は少なくないそうだ。
そこで、本書に掲載されているセルフケアを試すようすすめる。
今回は、そのセルフケアの一部を紹介しよう。
坐骨神経を締め付けるインナーマッスルをほぐす
坐骨神経痛を患っている人に対し、酒井さんは、「ほんとうの原因」を見つけるのが先決と説く。
その原因は、「腰回りの関節・骨の問題」、「腰回りの筋肉の問題」、「下半身にある神経の問題」の3つに大きく分けられるという。腰回りの関節・骨の問題は、さらに細かく分かれるが、基本的な考えとして、どのタイプの問題を抱えているかを特定し、それに合ったセルフケア(主にストレッチ)を行うことになる。
以下は、「腰回りの筋肉の問題」にアプローチする「イスで脚組みストレッチ」となる。これは、お尻にある梨状筋というインナーマッスルをほぐすもの。梨状筋は、坐骨神経の根元部分の上に覆いかぶさるように伸びているが、ここが緊張・硬直すると、坐骨神経を締め付けてしまう。結果、下半身のしびれや違和感をもたらす。
そこで、以下のストレッチによって梨状筋を柔軟にし、症状の改善をねらう。
では、さっそくやってみよう。
1.イスに座って背すじを伸ばす
イスに浅めに座り、両足を肩幅程度に開く。背すじは伸ばす。
2.脚を組んで上体を前に倒し、お尻を伸ばす
しびれや違和感のあるほうの脚の外くるぶしを、反対の脚の太ももの上に乗せ、上体をゆっくりと前方へ倒す。「脚を上げている方のお尻がしっかりと伸びている」と感じられたら、その体勢を30秒~1分間キープ。
回数の目安は1日1回~3回。余裕があれば、反対側の脚も同じ要領でストレッチを行う。
神経をほぐして不快な症状を緩和するストレッチ
次は、「下半身にある神経の問題」に対処するセルフケアを1つ。
腰から足先まで伸びている坐骨神経や、下半身にあるそのほかの神経は、緊張・硬直した筋肉に締め付けられ、神経も異変を生じて不快な自覚症状を引き起こしやすい。
その対策のひとつが、「太もも神経ほぐし」。筋肉を和らげて、神経組織や血管組織の柔軟性をも回復させる即効的なものだ。これも、以下のとおり引用するので、トライしてみよう。
1.しびれがあるほうの脚のかかとをイスに乗せる
しびれや違和感があるほうの脚を外側に回旋させた(開いた)状態にして、かかとをイス(または平台など)の上に乗せる。
2.ひざの上を両手で押し、太ももも外側を伸ばす
ひざのお皿の骨の少し上の内側の位置に、両方の手のひらを乗せ、体重を利用しながら床に対して垂直にグーッと押す。「太ももの外側がしっかりと伸びている」と感じられたら、その体勢を1~3分間キープ。回数の目安は1日1~3回。
つま先は真っすぐに伸ばすのではなく、外側に開くことに注意。
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本書には、こうしたセルフケアが、原因・症状に応じて多数掲載されており、さらに日常生活での正しい立ち方など、好ましい生活習慣も取り上げられている。最初のうちは面倒に感じるかもしれないが、まずは1~2種類のケアを実施すればOK。慣れてきたら、バリエーションを増やしてみよう。坐骨神経痛に悩んでいる人は、一読と実践をおすすめしたい。
本書内イラスト:秋葉あきこ
【今日の健康に良い1冊】
『図解 今すぐ治せる!坐骨神経痛』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。