取材・文/坂口鈴香

中澤真理さん(仮名・56)は、母富代さん(仮名・92)の上の妹、八重子さんが急死して一人残された高齢の叔父をホームに入居させるのに奔走した。叔父の問題は片付いたが、もう一人の叔母、宣子さん(仮名・85)にステージ4のがんが見つかった。胸椎を圧迫骨折して入院中の父要さん(仮名・98)の退院後の生活をどうするかも気がかりだ。

【シングル一人娘の遠距離介護3】はこちら。

年金で両親の別所帯がまかなえるのか

叔母の宣子さんは入院していた病院でコロナに感染し、ホスピスに転院するのが延期になったが、その後無事に転院し容体もいったん落ち着いている。あとは、両親がそれぞれ目指す“幸せな状況”問題だ。要さんのホーム探しでネックとなっているのが、年金で二人の別所帯がまかなえるか、ということだ。

「叔父の場合、叔母が亡くなっているので、年金をすべて叔父のホーム費用に充てることができます。一方両親は、父がホームに入っても母の生活費が必要になるので、両親の年金で二人がやっていけるのか」

要さんの年金は2か月で42万円だ。これは、介護保険の自己負担が2割に当たるほど高額とみなされている金額だ。

「それでも、1か月21万円でホームの料金と母の生活費を出すのは厳しいです。いいなと思うホームがあったのですが、家賃や食費、管理費などで13万、そこに介護保険料や医療費、紙パンツ代などを加えると17万かかります。母が若いころ加入していた厚生年金が月に3万あるのですが、それを足してもホーム料金と母の生活費には足りません」

地方だということもあるが、この月13万というホーム料金は破格だ。それでも2人で生活するとなると、この状況だ。要さんが老後のことをどこまで考えていたのか、中澤さんは暗澹たる思いに襲われている。

「60歳で定年退職したあと、父は仕事を完全に辞めました。当時、自分が100歳近くまで生きるとは思っていなかったのでしょうが、60歳以降働かなくても年金だけで何とかなると思っていたのかもしれません。今両親は98歳と92歳。60歳から38年間も行動する時間はたっぷりあったはずです。『入れるホームがないのもしょうがないよね。お金を用意してなかったんだから、入れるところを探すしかない』と言わざるを得ません」

中澤さんもあと数年で60歳だが、60歳で仕事を辞めるなんてとてもできないと言う。

いつ何があってもおかしくない。覚悟を決めた。次ページに続きます

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