取材・文/坂口鈴香

通い・訪問・宿泊を組み合わせてサービスを提供

「寝たきりになってもおかしくなかった母」(https://serai.jp/living/1096555)で秋元良和さん(仮名・61)の母奈津江さん(仮名・90)が利用していたのは、「小規模多機能型居宅介護(小多機・しょうたき)」というサービス施設だった。最近、このサービスを使っているという話をよく耳にする。どんなサービスなのだろうか。

小規模多機能型居宅介護とは、デイサービスを中心に訪問介護やショートステイを組み合わせてサービスを一体的に提供し、中重度になっても在宅での生活が継続できるよう支援するサービス施設をいう。奈津江さんは、デイサービスを週に3回、泊まりを1回という頻度で利用している。

もし小規模多機能型居宅介護を利用せずに、デイサービスと訪問介護を利用しようとすると、それぞれ別の事業所からサービスを受けることになる。小規模多機能型居宅介護なら、1つの事業者と契約するだけで、利用者や家族の希望に合わせて、なじみの職員からデイサービス、訪問介護、泊まりなどのサービスを受けることができる。事業所は利用者の情報を共有できるし、利用者もなじみの職員による介護を受けられるので、信頼関係も築きやすい。家庭的な雰囲気で、認知症の方も落ち着いて過ごすことができる。また泊まりを利用したいと思ったタイミングで柔軟に利用できたり、デイサービスでも入浴のみなど必要なサービスだけを受けられたりするなど、サービスの自由度が高いのも特徴だ。

ケアマネジャーは選択できない

小規模多機能型居宅介護を利用すると、その事業所に配属されたケアマネジャーが担当となり、サービスを一元的に管理することになる。もしこれまで担当してくれていたケアマネジャーがいても、小規模多機能型居宅介護のサービスを利用する時点でケアマネジャーも替わることになるので、注意が必要だ。なお小規模多機能型居宅介護を利用すれば、別事業所の介護サービスを受けることはできない(訪問看護、訪問リハビリ、福祉用具貸与などのサービスは併用できる)。

料金はサービスの利用回数にかかわらず定額制となる。要介護度に応じた利用基本料金、そこに食事や宿泊、おむつ代などの料金が加算される。先に挙げた秋元さんの場合、要介護2で月に5万円ほどかかっているそうだ。

なお、小規模多機能型居宅介護に似たサービスに、「看護小規模多機能型居宅介護(看多機・かんたき)」というものがある。こちらは医療依存度の高い人や退院直後の人、看取り期の人などに、主治医と連携し訪問看護、訪問介護、デイサービス、泊まりといった介護と看護が一体となったサービスを提供する施設だ。

小規模多機能型居宅介護を受けられる条件は、要支援か要介護の認定を受けていることと、サービスを提供する事業所と同じ自治体に住民票があることだ(看護小規模多機能型居宅介護は要介護1以上)。小規模多機能型居宅介護を利用したい場合は、担当のケアマネジャーがいればケアマネジャーに、いないなら地域包括支援センターや役所に相談してみよう。

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

 

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