取材・文/坂口鈴香

中澤真理さん(仮名・56)は東京と両親の住む九州を行き来しながら介護していたが、父要さん(仮名・98)が胸椎を圧迫骨折したことで、一気に介護のフェーズが変わったと感じている。要さんは自宅に戻ることを切望しているが、高齢の母富代さん(仮名・92)の負担が大きいので、もう自宅には帰せないと考えている。

【シングル一人娘の遠距離介護2】はこちら。

もう一人の叔母に余命宣告

亡くなった叔母の夫である叔父や、要さんを見ていると、妻なしでは生活できない九州男児は大変だとしみじみ思う。叔父のその後については、叔母の初盆に合わせてアメリカから従姉妹が一時帰国して、中澤さんとともに片づけることになった。

「従姉妹が日本に滞在する2週間で何をして、どう動くのか、作戦会議を開きました。叔母の相続の手続き、叔父に成年後見人を付ける。そして一人暮らしはもう難しいので、ホームを探して移ってもらい、マンションは売る……とやらなければならないことは山のようにありました」

叔父の国内での身元保証人は中澤さんしかいないので、従姉妹が帰国している2週間で片づけるには計画的に動く必要があった。

さらに、このとき中澤さんにはもうひとつ背負うものが増えていた。この10日ほど前に、もう一人の叔母、宣子さん(仮名・85)にステージ4のがんが見つかり、余命宣告を受けたのだ。

「叔母はずっと一人で生きてきた人らしく、毅然と医師の話を聞き、『手術はしない。抗がん剤治療も受けない。家にいられる間は自宅で過ごす』と伝えました。担当医は、最期まで自宅で一人で過ごすのは難しいので、最期をどこで過ごすか、住みかえも考えた方がいいという意見で、ホスピスの資料をもらってきました」

ところが従姉妹と作戦会議をした翌日、宣子さんは体調が急変し救急搬送された。たまたま皆で集まって食事をしようということで、富代さんが宣子さんの家に行っていたので、すぐに対応できたのは幸いだった。

もっとも富代さんは慌ててしまい、中澤さんと、アメリカで看護師をしている従姉妹が駆けつけて的確な処置ができたのだが。

叔父をホームに入居させる。次ページに続きます

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