暮らしを豊かに、私らしく
夫婦問題研究家(R) 、パートナーシップアドバイザーの岡野あつこさん

かつては愛し合っていたのに、いつの間にか距離が離れている夫婦関係。

夫婦問題研究家の岡野あつこさんは「夫婦の大多数が離婚を望んでいません」と語ります。しかし、もともと他人同士の男女が同居して家庭を営むのが夫婦。その距離は近く、密度が濃い。長年重ねてきた、不満や怨恨は一朝一夕には流せないと多くの人が思っていること。岡野さんは、3万8000件以上の結婚、離婚、再婚相談を受け、数多くの夫婦問題を解決に導いてきました。その奥義を新刊『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)で紹介しています。

1回目では、夫婦関係を良好にする魔法「夫が変わる3つの行動」を、2回目の今回は、「我慢から解放される3つの技術」を教えていただきました。

文/前川亜紀

多くの夫婦を見てたどりついた「離婚しないで済むなら、それに越したことはない」

「熟年離婚」という言葉を見るたびに、「私も自由になりたい」と思う人は少なくありません。厚生労働省は2022年8月に「2020年に離婚した夫婦のうち、20年以上同居した夫婦の割合が21.5%にのぼり、これは統計のある1947年以降で過去最高だった」と発表。これを受けて「みんな離婚しているのだから、私にもできるでしょう」と、岡野さんのところにかけ込む人も増えているそうです。

岡野 結婚20年以上の夫婦が離婚に踏み切りやすいのは、子供の教育費の負担が軽くなっていたり、子供が独立したりしているからです。

子供の大学の後期の授業料を振り込んだ足で、離婚届を提出しに行ったという話も聞いたことがあります。育児にまつわる金銭的負担が軽減し、身軽になるのが50代ごろからといえます。

同時にそれなりの資産もできており、夫が大手企業に勤務していた場合、貯金や持ち家などから、相応額の「財産分与」が得られます。加えて、年金分割で受け取れる厚生年金もあり「離婚するなら、体力がある今でしょ!」と踏み切ろうとする人も多いのです。

ただ、現実は理想通りに行きません。離婚した当初は自由で楽しくても、生活費の負担が思いのほか大きかったり、なかなか仕事が決まらなかったりすることもあります。また病気になったときに助けてくれる人がいない、日常生活で会話をする相手がいない、ひとりだと家事がおっくうになり買い物にも出ずに孤立してしまうなど、不幸な結果になることも多々あります。

私はそんな夫婦を見てきたからこそ、「離婚しないで済むなら、それに越したことはない」という考えに至りました。

1回目では、夫が変わる「3つの行動」を紹介しました。今回は1回目で実践したことを基礎とし、さらにいい関係になれる「愛の技術」を紹介します。

我慢から解放される「3つの技術」

1.出会った頃の気持ちを呼び覚まし夫をニックネームで呼ぶ

岡野 まずおすすめしたいのは、出会った頃のニックネームで夫を呼ぶこと。楽しかった恋人時代、結婚式、旅行、出産、クリスマスや誕生日……笑顔が多かった幸せな時間を思い出し、心を温めます。

そして、夫をニックネームで呼ぶのです。

夫婦仲が悪くなるのは、お互いを「パパ(お父さん)・ママ(お母さん)」などという肩書で呼び始めるころです。やはりそれだとどうしてもさみしくなる。そこから不和が起こり、溝が深くなることもあるのです。

名前というのはとても重要です。「〇〇ちゃん」「〇〇くん」などかつて呼んでいた夫の名前で呼びかけてみる。自分の声帯を振動させて発語すると、気持ちが「あの頃」に戻るような感覚もあるでしょう。たったこれだけで、夫の態度がガラリと変わる場合もありますよ。その気持ちで夫に接すると、また心持ちが変わってくるはずですよ。

2.自分ためにおしゃれをする

――出会った頃といえば、おしゃれにも気を遣っていました。

岡野 自分のためにおしゃれをしたり、メイクしたりすると、不思議と夫婦関係がよくなります。

装うとは自分を愛する行為であり、自分を大切にしていると、相手にも「あなたを大切に思っていますよ」というメッセージが自ずと伝わるのです。また自分を魅力的に見せる服を着ると、心が豊かになります。肌を手入れしたり、髪を整えたりすると、自信も生まれてきます。夫は見ていないようでいて、実は見ています。妻がいつもより少し美しくなるだけで、夫から注がれる愛情は倍増するはずです。

とはいえ、ドレスアップをしなければならないということではありませんよ。いつもトレーナーを着ているなら、ルームワンピースに変えてみる。ノーメークなら眉毛を描いてリップを塗るだけでもいいんです。

外見から整えていくと、自信もつき魅力的になっていく。夫から愛されるだけでなく、尊敬されるようになります。おしゃれって、手軽にできる幸せの近道なんですよ。

3.隙間時間を共有する

――変化に気づいてもらえないと嘆くのではなく、自分のためだと思えばおしゃれも楽しめそうです。ただ、すれ違いの時期は一緒に過ごす時間すら少ないかもしれません。

岡野 一緒に過ごす時間が少ないことも、夫婦仲が悪くなる一つの要素。時間がないなら、その密度を濃くすればいいのです。

そこで注目したいのはマッサージ。肩や腕を揉まれると、こり固まった部分がほぐれて、血がじわじわとめぐってくる。「あ~気持ちいい」と思います。隙間時間を使い、夫にマッサージを行なうことも夫婦関係がよくなる技術のひとつです。ただ、いきなり「肩を揉むよ」と言っても「今忙しい」とか「いらない」などと言われる可能性も。

まずは夫の立場に立って想像してから、声をかけるのです。例えば、帰って来た夫が、イスに座って、ぼんやりとテレビを観ていたとします。夫が好きなサッカーだったら、そのままテレビに集中してもらう。でも、特に興味がないような番組なら、「肩がこってそうだね。ちょっと揉もうか?」などと声をかけてみる。すると夫は「お、頼むよ」などと言って来るでしょう。相手の立場に立って、タイミングを計ることも大切です。

マッサージはスキンシップのひとつ。上手下手ではなく、気持ちが大切です。ハンドクリームを使い、手をマッサージするのもいいですね。それを続けるうちに、夫は妻を大切に思うようになり、「よし、明日も頑張るぞ」という気持ちも生まれてきます。

夫婦は鏡です。夫への態度を変えることで、夫の態度も変わっていきます。

夫の立場に立って考え、会話の機会を増やす

以上の「3つの技術」をお伝えすると、「我慢してやってみます」という方がいますが、それならやらないほうがいいです。

これらのテクニックを使う目的は、相手を理解することで、あなた自身が夫への我慢から解放されることにあります。夫の立場に立って考えれば、想像力もついてきますので、衝突が減ります。加えて、会話の回数が増えれば、お互いに意志疎通もスムーズに。不満を溜め込むことも少なくなります。無遠慮なことを言われたら「今、あなたにそう言われて私は悲しい」などと伝えられるようにもなります。そうすれば、夫は次から気を付けるようになるでしょう。だって夫はあなたを愛しているから。愛する人を悲しませることはしないはずです。

縁あって夫婦になったのだから、お互いにいい姿を映しながらともに過ごしていきたいもの。今、あなたの心に少しでも夫への気持ちが残っているなら、まずは自分を愛し、そして「3つの行動」からやってみてください。そして、仕上げに「3つの技術」を実践してみるのです。

夫はあなたが思う以上に、あなたの変化を受け入れます。あなたがいい夫婦関係を維持し、幸せな人生を送ることをお祈りしていますよ!

※本記事の内容は、夫から言葉や肉体の暴力を受け続けている人には当てはまりません。その場合は、自治体の窓口や専門家などに相談ください。

岡野あつこ(おかの・あつこ)
立命館大学産業社会学部卒業後、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験をもとに、91年に離婚相談室を設立。以来、「 離婚しないに越したことはない!」をモットーに 、3万8000件以上の結婚、離婚、再婚相談を受け、数多くの夫婦問題を解決に導く。夫婦問題研究家(R) 、パートナーシップアドバイザー 。カウンセラー育成にも力を注ぎ、「マリッジカウンセラー、夫婦問題カウンセラー養成講座」を開講。NPO法人日本家族問題相談連盟理事長。YouTube「岡野あつこチャンネル」更新中。

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