文/鈴木拓也

若い頃は揺るがないと信じていた人生観・価値観も、年を重ねると次第に変わっていくものだと気づかされる。
『サライ.jp』を含め多くの媒体で、作家・書評家として活躍する印南敦史(いんなみ・あつし)さんも、それを実感したひとりだ。

1962年生まれの印南さんは、消費・物欲が善とされたバブル時代の狂騒を駆け抜け、多分に世相の影響を身に受けてきた。
それが落ち着いてくると、「これはいらないよなぁ」と感じるものからのストレスが増えていったという。

「これ」とは、物質的なモノに限らない。仕事のやり方や生活習慣など、目には見えない諸々の事柄にまで及んだ。それらをどんどん捨て去っていくと、生活は快適になっていたという。

そんな、印南さん流の思考法を1冊にまとめたのが『それはきっと必要ない 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術』(誠文堂新光社)だ。
具体的にどのようなことが書かれているか、今回はその一部を紹介しよう。

相談しようかどうか、「悩む時間」は必要ない

職場にたいてい1人はいる、相談しにくい人。

「そんなこともわからないの?」といった否定的な反応が来るので、できれば避けて通りたいが、同じ部署ではそうもいかない。
こんな「つきあいづらい人」との間に築かれる壁は、実は簡単に越えられると印南さんは説く。

それは、「つきあいづらいなぁ」という気持ちを意識から逸らし、「相手に関心を持ち、こちらから心を開く」ことだという。

実際の話、つきあいづらい人が、根っから性格が悪いというのはまれで、単にコミュニケーションが不得手という場合が少なくない。そこで、趣味や家庭のことなど「これが好きそうだな」というポイントを探し、そこから「〇〇にお詳しいですね」「〇〇がお好きなんですか」などと気さくに聞く。相手の関心ポイントにヒットし、関心を示してくれたら、そこが突破口になると印南さんは説く。

「自分と同じことに興味を持っている人間」として、多少なりとも心を開いてもらえる可能性が生まれるのです。そして、少しでもそういう空気を感じたら、勇気を持ってさらに一歩踏み出してみるべき。その結果、ことばにできない“なにか”を共有できるようになり、以後はどんどん距離が縮まっていくはずだからです。(本書19pより)

そこから良好な人間関係へと発展させるコツとして、印南さんが挙げるのが「傾聴」。意識を自分に向けるのではなく、相手に意識を集中して話を聞く、「自分を捨てる」やり方がよいという。

「積ん読」は必要ない

印南さんは書評家という仕事柄、書物とは切っても切れない関係にある。
1日に1~2冊はコンスタントに本を読む必要があり、出版社からの献本もあれば、個人的に興味のある本もある。そのため、毎月50~100冊ずつ本が増えていくという。

学生時代から「本に囲まれた暮らし」に憧れていたと述懐するが、今は「もう読まない本であれば、とっておいても意味がないなぁ」と感じているという。当然ながら、読まないまま積み上げておく「積ん読」も卒業。これには、「そこそこ整理された空間でないと生活しづらい」という心境の変化が大きいようだ。

また、アマゾンのマーケットプレイスなどで、新古書が安価で入手できるようになったのも、脱積ん読のきっかけになっている。いったん処分して、(可能性は低いものの)また読みたいとなったときは、それを利用すればいいからだ。

つまり、現代は必ずしも蔵書をとっておく必要のない時代とも考えられるのです。(中略)そのぶん生活空間をすっきりと整理しておいて、必要なときになんとかすればいい。現実的に、そのほうが快適に暮らせると思うのですが、いかがでしょうか。(本書128pより)

「ダラダラ飲む習慣」は必要ない

印南さんにとって、その日の仕事が終わった後の楽しみは晩酌。その流れで、食後も書斎にワインを持ち込んで、眠くなるまで「ダラダラ飲んでいた」という。
それではいけないと、週2日は休肝日をもうけるようにしたが、習慣化できずに諦めかけていたそう。

そんなある日、印南さんは知人の編集者から、外飲みはする代わりに家では炭酸水やトマトジュースを飲んで酒量を抑えていると聞く。そこで、自身でもやってみたところ、うまくいったという。

書斎では飲まなくなり、「食後の炭酸水」を心地よく感じるようになったんですよね。「一度飲んだら飲めなくなるまでズブズブ」とう勢いだった自分が、まさかそんなことを感じるようになるとは。(本書145pより)

この習慣をきっかけに、晩酌を含め飲酒をまったくしない日も増えていく。完全に断酒したわけではないが、早寝早起き体質になって午前中の生産性が向上するなど、いいことづくめ。精神的にも余裕が出てきたとも。

コロナ禍の影響で、家で結構な量の酒を飲むようになった人が増加していると聞く。一部でも炭酸水に切り替えれば、二日酔いの後悔も減らせのるではないだろうか。

*  *  *


本書は、ウェブマガジン「よみもの.com」の同タイトルの連載をまとめたもの。印南さんは、書籍化にあたり大幅に加筆修正し、より含蓄に富む内容へとブラッシュアップしている。昔から固守してきた価値観や習慣に疑問を持ちつつも捨てられないでいる方に、役立つヒントが詰まったおすすめの1冊だ。

【今日の人生に役立つ1冊】

『それはきっと必要ない 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術』
印南敦史著
誠文堂新光社

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)で配信している。

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