文・石川真禧照(自動車生活探険家)

韓国の自動車メーカー・ヒョンデ(現代)の車が、日本に再上陸を果たした。過去に例のない先進的な運転サポート技術を初導入し、外装や内装のデザインも個性的だ。世界が評価する新型車の実力とは。

世界・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞した外観。角ばった走行灯や車体側面の直線的な面処理が新鮮。4WDとFF車がある。

脱炭素化を目指して自動車もさまざまな取り組みが行なわれている。電気自動車(EV)もそのひとつの方法だ。電気とモーターで走行するEVは、少なくとも走行中に二酸化炭素(CO2)を出すことはない。日本の自動車メーカーも全力でEVの実用化に向けて研究、開発を続けている。日本勢はエンジンとモーターを両立させて走行するハイブリッド(HV)車やプラグインHV車(※外部からの充電もできるハイブリッド車)に力を入れてきたので、世界の流れからやや遅れている感がある。

現在、日本で販売されているEVは30種ほどあるが、半数以上が輸入車だ。ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、アメリカから続々と上陸している。そこに新しい輸入車が加わった。韓国からヒョンデが上陸してきたのだ。

EVでは初の三冠を獲得

全長、全幅、全高、ホイールベースはトヨタ、日産の最新EVと大差ない。重量はやや重め。

ヒョンデのアイオニック5は昨年から今年にかけて北米を中心に世界中で話題となった。4月にニューヨークで発表された「世界・カー・オブ・ザ・イヤー」(WCOTY)で、本賞のカー・オブ・ザ・イヤーを獲得、同時に電気自動車・オブ・ザ・イヤー、カー・デザイン・オブ・ザ・イヤーの三冠を受賞したからだ。この賞は世界33か国102名の審査員が投票し、5つの賞を決定する。毎年行なわれているが、三冠を獲得したEVはアイオニック5が初めて。

車に興味のある読者なら、ヒョンデ(ヒュンダイ)の名に聞き覚えがあるだろう。2001年に小型と中型のガソリン車を日本で販売していたからだ。しかし、思うように売れず’09年に日本から撤退。今回はEVと水素自動車という2種類の先進環境車で再上陸してきた。

前席は座面下から膝下を支えるオットマンがせり上がる。
後席の床も平らで足元は広い。背もたれも調節可。乗り心地はやや硬め。

ふたつの液晶画面への表示で、視線の移動が少なく後方確認

車体後部も直線を主体にシャープな面とデザインで構成されている。タイヤは20インチ径のスポーツタイヤで、乗り心地は硬め。

日本での正式販売前の実車に、試乗してみた。まず驚いたのは、想像以上に先進感のある内、外装だ。前のバンパー、ヘッドライトから、車体側面、後部のブレーキランプ、バンパーまで、近未来的なデザインで統一されている。

その驚きはドアを開け、運転席に座ったときにも続く。大きな横長の液晶画面がふたつ並び、走行用以外の大半の操作がそこに集中しているのだ。

デザインも優れた前席前。室内の素材や塗料は環境にやさしいものを使用。足元も広い。

もちろん、先進技術の導入も進んでいる。試乗に出掛けようと、方向指示器のレバー(国産車と同じ右レバー)を下に押した。同時に目の前の液晶画面のメーターの右側に車体の右後方の映像がうつし出された。

左に方向指示器を操作すれば左後方がうつし出される。運転者の視線の移動がほとんどないまま、後方の側面が確認できる。このようなアイデアはアイオニック5が初めてだ。

運転席前の計器盤。方向指示器を右折に指示すると計器盤に車体右後方の映像がうつし出される。

走り出してからの静粛性、運転のしやすさも好印象だった。

車両本体の価格も同クラスの国産EVより低価格に設定されている。販売網や整備態勢などの課題はあるが、ヒョンデの日本での再挑戦に期待したい。

車体前部ボンネット下にはフタ付きの小物入れが設けられている。
車体後部の荷室。奥行き、左右幅ともに1m以上ある。床面はやや高い。
充電口は家庭用200Vと、急速充電(CHAdeMO対応)を設定。

ヒョンデ/アイオニック5 Lounge AWD
全長×全幅×全高4635×1890×1645mm
ホイールベース3000mm
車両重量2100kg
最高出力305PS/2800〜8600rpm
最大トルク61kg-m/0〜4000rpm
駆動方式4輪駆動
一充電走行距離577km(WLTCモード)
総電力量72.6kWh
ミッション形式1速
サスペンション前:ストラット式 後:マルチリンク式
ブレーキ形式前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
乗車定員5名
車両価格589万円
問い合わせ先:カスタマーセンター 電話:0120・600・066

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2022年8月号より転載しました。

 

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