文・石川真禧照(自動車生活探険家)
車体フレームの強度を大幅に高めることで、ブレの少ない上質な走りを実現した新型レヴォーグ。運転支援機能を活用し、長距離でも楽に運転することができる。2020年日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車。
乗用4ドアセダンの屋根を車体後部まで延ばし、最後部に大きく開閉する扉を付けた車を「ステーションワゴン」と呼ぶ。この車種を日本で定着させたのがスバルだ。1989年、「レガシィ ツーリングワゴン」を発売。それまで日本では商用のバンが主流だったが、スバルは乗り心地のいいワゴン車を世間に広めた。商用バンは乗り心地が硬く、室内は簡素で、車体色はグレーのような地味な色が中心だった。対して、ワゴンは乗り心地がよく、室内装備は充実し、車体色は華やかな色を揃える。
スバルのワゴンは大人気となり、2014年、レガシィのワゴンは「レヴォーグ」という車名に変わった。日本市場に向けた車づくりは多くのワゴンファンに支持された。そのレヴォーグが、2020年12月にフルモデルチェンジをして2代目へと進化した。
世の知恵を開発に取り入れる
2代目レヴォーグをはじめて見たのは、1年以上前のことだ。車の開発には短くても3〜4年はかかる。その間に新しい技術を取り入れ、実用化のための耐久性や使い勝手を実験し、完成度を高めていく。スバルはレヴォーグの開発にあたり、事前に外部の人に乗ってもらい、その意見を参考にしながら開発を進める手法を取り入れた。幸運にもそのひとりとして参加させてもらえたのである。
数度にわたる実車試乗や意見交換のなかで痛感したのは、レヴォーグの開発担当者たちの意気込みと、車への愛の深さだった。近年、車の開発者たちに会ってみると、意外に冷めた関係ということがよくある。しかし、レヴォーグの開発者たちは違っていた。
日本を旅するために生まれた最先端のツーリングワゴン
スバルはレヴォーグを、“グランドツアラー”(大陸旅行車)と位置づけている。旅をするのに充分な荷室スペースと、快適に長距離を移動できる性能が、この車の売りである。車体のフレームを大幅に補強し、サスペンションやハンドル操作性能も強化。振動が少なく、山道のカーブ走行でも意のままに走る車に仕上がっている。
スバルは「アイサイト」と呼ばれるカメラやレーダーを用いた運転支援機能で有名だが、その性能を飛躍的に向上させた。人工衛星やGPSからの位置情報と3D地図データを活用し、高速道路では車速・車線中央を保つ。急なカーブや料金所では自動的に減速する。
また、時速50㎞以下の渋滞時には、ハンドルから手を離して走行することもできる。渋滞末尾で停止しても、自動的に再発進。追い越し時の加減速も、自動制御でアシストしてくれる。運転者に異常が起きた場合は自動で停止し、ハザードランプやホーンで周囲に異常を知らせる装置もついた。
操作は、機械音痴でも扱いやすく、運転中の疲労度を抑えるのにとても役に立った。自由に旅ができるようになったら、こんな車でぜひ遠くへ出かけたい。
スバル/レヴォーグ STIスポーツEX
全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1580kg
エンジン:水平対向4気筒DOHC 1.8Lターボ
最高出力:177PS/5200〜5600rpm
最大トルク:30.6kg-m/1600〜3600rpm
駆動方式:4輪駆動
燃料消費率:13.6km/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 63L
ミッション形式:8速マニュアルモード付き 無段変速
サスペンション:前:ストラット式 後:ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ形式:前・後:ベンチレーテッドディスク
乗車定員:5名
車両価格:409万2000円〜
問い合わせ先:SUBARUコール電話:0120・052215
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2021年3月号より転載しました。