文・石川真禧照(自動車生活探険家)

1885年にガソリンエンジンを発明したゴットリープ・ダイムラーと、翌年、ガソリンエンジンの4輪車を開発したカール・ベンツ。その歴史を受け継ぐメーカーが最新技術のすべてを注いだ新型車に試乗した。

基本デザインは先代を踏襲しつつ、線や角を大幅に減らし、曲線を中心とた形を採用。これからのメルセデス車の形はこうなる。

「私たちメルセデスには、自動車を発明した責任があります」

四半世紀以上前に新型車の取材でドイツのダイムラー・ベンツ本社を訪ねたとき、当時の重役はこう誇らし気に言った。そんな自信に裏付けられた車づくりは今でも変わっていない。8年ぶりに新型になったフラッグシップ(旗艦)モデル「Sクラス」に乗ると、メルセデス・ベンツの車づくりに対する気構えが伝わってくる。

メルセデス・ベンツの高級モデルは、いつの時代も持てる全ての技術を搭載し、世界の自動車の標とされてきた。国産車でもSクラスと比較できるクラスの高級車が出てきているが、まだまだかなわない部分は多い。しかも最新のSクラスは国産の同クラスの高級車並みの値付けをし、競争を挑んできている。

世界最先端のもてなし

全長、ホイールベースは国産の高級車レクサスLSよりも短いが全高は55㎜も高い。

新型Sクラスには、2種類の車体とエンジンが用意されている。車体は、標準車のほかに、全長とホイールベースを110mm長くし後席を広くした「ロング」を展開。エンジンは、排気量3Lのガソリンとディーゼルを選べる。ガソリンエンジンは小型の電気モーターを組み合わせたマイルドハイブリッドを採用している。

今回、撮影したのは標準車体のディーゼルターボ車。新型Sクラスではもっとも低価格なモデルで、最近の国産高級車とほぼ同等の価格設定だ。

2種類から選べるエンジンはディーゼル、ガソリンともに直列6気筒。完成度は高い。

キーを持ち車に近づくと、ドアハンドルが車体から自動でせり出してくる。暗い夜は同時にドアの足元に照明が灯り、乗り降りを助ける。いかにも高級車らしい“もてなし”が乗員を迎えてくれる。

メルセデス・ベンツ史上はじめて格納型のドアハンドルを採用。走行中は車体に収納。

声と手の動きでナビ、空調の操作、ルーフの開閉ができる

車体側面まで回りこんだテールライトは最近のデザインの主流である横長の三角形。

室内に入り、運転席に座ると、若干とまどうかもしれない。前席中央上部に位置する大画面の有機ELパネルに多くの機能が集約されている。スイッチを押したり回したりして操作するのではなく、スマホのように指で触れて操作する。それゆえ、はじめて新型Sクラスを運転する際は、“ドイツ語のABC”から習うのに近い気持ちになるかもしれない。

中央の大きな画面で大半の操作ができる。運転者の目の前にも液晶の画面が拡ひろがる。
ヘッドレストの感触が抜群の前席。
後席はロング仕様ではエアバッグが装備されている。

慣れてくれば、指での操作に加えて「ハイ、メルセデス」と声をかけることにより、ナビゲーションの目的地入力、空調操作、ラジオや音楽選択、電話通話などができるようになる。さらに手の動きやジェスチャーを3Dカメラが読み取り、室内灯やスライディングルーフ、日除けなどの開閉ができる。運転者は最小限の動きで車の大半の操作が行なえる。これは長距離走行だけでなく、街中での運転も楽になることを意味する。

安全運転に関しては昔から世界最新の技術や装備を備えているが、新型でもレーダーやカメラ、センサーが360度全方位を監視し安全を保つ。この安心感は、乗っていると実感できる。世界中のVIPたちがSクラスを愛用するのも納得できる気がした。

ヘッドライトは昼間でも3灯が光り、存在を明確にする。夜間の明るさも安全運転を助ける。
新型から採用されたのが4輪操舵。低速ではハンドルを右に切ると後輪は左に動き旋回する。

メルセデス・ベンツ/S400d 4マチック
全長×全幅×全高:5210×1930×1505mm
ホイールベース:3105mm
車両重量:2180kg
エンジン:直列6気筒 2924cc ディーゼルターボ
最高出力:330PS/3600~4200rpm
最大トルク:71.4kg-m/1200~3200rpm
駆動方式:4輪駆動
燃料消費率:12.5㎞/L(WLTCモード)
使用燃料軽油:76L
ミッション形式:電子制御 9速 自動
サスペンション:前:4リンク、後:マルチリンク
ブレーキ形式:前・後:ベンチレーテッドディスク
乗車定員5名
車両価格1293万円
問い合わせ先:メルセデスコール 電話:0120・190・610

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2021年8月号より転載しました。

 

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