大正4年(1915)に名古屋で創業された、牧田電機製作所がマキタの前身だ。以来、モーターの販売修理を中心に事業を展開、電動工具メーカーに転換したのは、昭和33年(1958)に国産第1号となる「携帯用電気カンナ」を発売してからのことだ。
マキタは早くから電動工具の小型・軽量化とコードレス化を進めてきた。昭和44年(1969)には電池式ドリル、昭和53年(1978)にはニッカド電池を使った充電式ドリルを発売、いまでは現場であたりまえのように使われている充電式工具は、1970年代に登場していた。
早くから登場していた充電式工具だが、ラインナップの展開が進むのは2000年代中頃、リチウムイオンバッテリーの登場後のことになる。リチウムイオンバッテリーは、従来の電池に比べパワーと持続時間に優れ、メモリー効果が起きない優れた特性を持つ。メモリー効果とは、継ぎ足し充電を繰り返すことで本来備えるバッテリー容量が次第に使えなくなる現象のことだ。マキタの担当者は「リチウムイオンバッテリーの登場により、プロ用工具のコードレス化が一気に進んだ」という。
マキタの充電式クリーナーは、充電式工具の普及とともに登場した製品だ。住宅建築現場の職人たちは一日の作業が終わると、現場の木くずなどきれいに掃除して帰る。そんなプロ意識にマキタのクリーナーは合致した。ほうきとちり取り感覚で簡単に扱えて、吸引力も充分にある。充電式クリーナーは後片付けの手間を軽減してくれた。いつも使っている充電式工具とバッテリーの互換性があることも、現場で支持された。
建築現場で評価を得たマキタの充電式クリーナーは、駅や商業施設などの清掃でも使われるようになる。新幹線の折り返しの際の車内清掃でも使われている。軽く扱いやすいので、作業の負担を減らし効率化を図るプロの道具として認められてきたのだ。
建築現場で使われ始めたクリーナーは、清掃業務用としても普及し、やがて家庭用として受け入れられていく。一般への認知はどのようにして図られてきたのか、前出の担当者に訊ねた。
「販売を仕掛けたわけではありませんが、工具メーカーが出しているクリーナーということで実用的な印象があり、口コミなどで知られていったのかと思います」
確かに「工具メーカーのクリーナー」といえば、堅実なイメージを受ける。だが、それだけではモノは売れない。堅牢で扱いやすく、集塵能力も家電メーカーの製品に負けていないことを、マキタを使う多くの人が知るところとなったのである。
外付けバッテリーの実力派
紹介するのは、遠心分離で集塵するサイクロン一体式の新製品だ。部屋の隅に立てかけておいても邪魔にならない、粋な仕上がりだ。とはいえ、電動工具にも使われるバッテリーが外付けになっているところが、やはり「工具メーカーのクリーナー」なのである。
バッテリー駆動ながら「吸込仕事率」は100W(パワフルモード時)を実現した。充電式クリーナーで100Wは充分な能力でメインの掃除機として使える実力を持つ。バッテリーが劣化しても交換が容易なので、長く使える1台となるだろう。
取材・文/宇野正樹 撮影/稲田美嗣 スタイリング/有馬ヨシノ
※この記事は『サライ』本誌2023年7月号より転載しました。