旧遠山家住宅|日興証券の創立者が最愛の母を思って建てた農家風の大邸宅【古き佳き日本の住まい 第4回】

写真・文/石津祐介

埼玉県の中央部に位置する比企郡川島町。のどかな田園地帯に建つ「旧遠山家住宅」は、日興証券の創立者である遠山元一が、当時最高の技術と厳選された建築材料を用いて、2年7か月の歳月をかけて昭和11年(1936)に完成させた近代和風建築だ。

元一の幼い頃、遠山家は没落した。やがて功成り名を遂げた後、生家の再興と苦労を掛けた最愛の母親のために、この住宅が建てられた。戦後、母親の死後は日興証券の迎賓館として使用され、昭和45年(1970)に敷地内に美術館を併設した遠山記念館として開館し、平成12年(2000)には建物が国の登録有形文化財に指定された。美術館には国の重要文化財も所蔵されている。(美術館は現在は改修工事のため休館しており2018年4月には再開される予定)

遠山記念館入り口の長屋門

約9,200平方メートルの敷地に、住宅は総建坪は400坪で、東棟、中棟、西棟の3つの棟が渡り廊下で連結する設計となっており、それぞれが特徴的な建築様式となっている。

東棟は茅葺屋根の豪農風建築で、生家の再興を象徴している。内玄関には欅の梁があり、囲炉裏のある18畳の広間は天井が茶室などに用いられる網代天井で、豪農風とは言いながらも昭和モダンの意匠が感じられる作りとなっている。

生家の再興を象徴とした豪農風の東棟

欅の太い大黒柱が特徴の東棟の内玄関

茶室などに用いられる網代天井の囲炉裏がある座敷

シャワーも備えた広々とした浴室

木がふんだんに用いられた洗面所

船底天井の中棟へ続く渡り廊下

中棟は接客をするために1階に和室、2階には和洋折衷の洋間がある。(2階は特別公開時のみ)1階の大広間は18畳の書院造りで、畳廊下からは庭園を見渡せる。

庭園に面した2階建て来賓の接客用の中棟

接客に用いられた18畳の書院造りの大広間

庭園に面した畳廊下

四季折々の風景が楽しめるように造られた回遊式の日本庭園

西棟は茶室建築の意匠を取り込んだ数寄屋造り。2つの座敷と仏間があり、母親が居室としていた。

墨差し天王寺という濃淡模様が特徴の土壁が使われている。

茶室建築の意匠を取り込んだ数奇屋造り

中棟から西棟へつながる渡り廊下

床の間を備えた中庭が見渡せる西棟の居室。欄間付の雪見障子

「墨差し天王寺」と呼ばれる日に当たると変色する土を用いた土壁

3つの棟が茅葺屋根、書院造り、数奇屋造りとそれぞれが異なる建築様式でありながら、当時最高の建築技術と伝統に忠実な細部の意匠が、全体として違和感なく溶け込んでいる。

庭園と建物を楽しむには、1日かけてゆっくりと見学することをお勧めする。

【遠山記念館】
■住所:埼玉県比企郡川島町白井沼675
■電話:049-297-0007
■開館時間:10:00~16:30
■休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始
■入館料:大人700円、学生500円、中学生以下無料
■アクセス:車利用は、関越道川越ICより車で30分、または圏央道川島ICより車で7分
電車利用は、川越駅から東武バス桶川行きで牛ケ谷戸(うしがやと)下車、徒歩約15分

写真・文/石津祐介
ライター兼カメラマン。埼玉県飯能市で田舎暮らし中。航空機、野鳥、アウトドア、温泉などを中心に撮影、取材、執筆を行う。

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で