文/石川真禧照(自動車生活探険家)

かつてレース界を席巻していたイタリアの名門アルファロメオが、長年の経験と先進技術を駆使して高性能スポーツセダンを開発した。同社史上、最良の仕上がりと評判の高い新型セダンの実力を探る。

楯をイメージした中央のグリルは、1940年代から採用する象徴的存在。ナンバープレートが中央にないのも同車の特徴のひとつ。

イタリアのアルファロメオ社は、2010年に創業100周年を迎えた名門自動車メーカーである。しかも、その長い歴史の大半をスポーツカーづくりに費やしてきた。1950年以降は、長年培ってきた知識と経験を基に、4ドアセダンの開発を手がけるようになった。

アルファロメオという社名は、ミラノで自動車製造を営んでいたロンバルダ社の頭文字A・L・F・Aと、’30年代に経営に加わったニコラ・ロメオの名を合わせたもの。十字架と蛇をあしらった同社の紋章は、ミラノの市章とミラノを支配していたスフォルツァ家の紋章を組み合わせている。

同社は’50年代にジュリエッタという小型車を発売し、好評を博した。車名の由来はシェークスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』。その後継車として’62年に誕生したのが、初代ジュリアである。

前窓から後部にかけてクーペのようなラインで躍動感を感じる。
全長はトヨタのマークXや日産スカイラインよりも少し短いが、全
幅はクラウンやフーガよりもやや広い。車体色は12色を用意する。

40年ぶりに復活した車名

同社は常に情熱とスポーツ心を感じさせる車づくりを実践してきたが、10年ほど前から販売不振が続き、経営が低迷していた。そこで親会社のフィアット・クライスラーがアルファロメオ再興に乗り出した。

名門ブランドの車を主力商品にすべく、かつての人気車種ジュリエッタを2010年に復活。そして2017年、新生アルファロメオを象徴する新型スポーツセダンに、’77年以降途絶えていたジュリアの車名を与えたのである。

シフトレバー左下のダイヤルで、エンジンや足回りの設定をダイナミック、ナチュラル(ノーマル)、アドバンス(エコ)に切り替えられる。

新型ジュリアの開発に際し、まずは車体の骨格から見直した。アルミやカーボンなど軽量素材を多用し、ブレーキや足回りも軽量化。床下面の空気抵抗を減らす新設計を採用し、安全面でも先進の技術を実用化させている。

前席は座面と背もたれ左右の縁へりが高く盛り上がっているので、体全体をしっかりと支えてくれる。革製シートは全車種に標準装備される。

後席の着座位置はやや高め。背もたれの傾斜はゆるやかで、後ろ窓の位置もかなり後方にあるため、頭上の空間に圧迫感はなく快適だ。

ジュリアは現時点で、フェラーリやランボルギーニ、マセラティなど名だたるイタリア車の中で、安全性能や車体構造の新しさにおいて最先端をいく車といっていい。

エンジンは4気筒とV6の2種類ある(写真は280馬力を発生する直列4気筒2L直噴ターボ)。エンジン音はじつに軽快だ。

4気筒Lのガソリンエンジンは200馬力と280力があり、V6の2.9Lは510力。いずれも8速自動変速機を組み合わせている。200馬力のエンジン搭載車は後輪駆動。馬力は限られているが、軽量化された車体と8速自動変速機で、運転者が思い描く通りの走りを楽しめる。

一方、280馬力の車種は4輪駆動だ。アクセルペダルを軽く踏むだけで、スポーツカーで名を馳せた名門ならではの力強い走りが楽しめる。現時点では左ハンドル仕様のみの設定だが、これこそ最もアルファロメオらしい4ドアセダンといえる。

左ハンドル仕様は4輪駆動車だけ。大径の速度計とエンジン回転計はアルファロメオ車の特徴。中央の液晶画面には音声認識機能が付く。

510馬力の車は、かつてサーキットレースを席巻していた時代の熱き血がたぎるアルファロメオを彷彿させる高性能車。あり余る馬力を制御しながら乗りこなす運転技術が求められる車種である。

荷室は左右幅680~1130mm、奥行き940mm、深さ940mm(いずれも実測値)。後席の背もたれは4:2:4で前方への可倒式。

いずれの車種もアルファロメオ史上、最良の仕上がりといえる。これならドイツの同クラス車と対等に勝負できそうだ。

車体側面から後部の荷室にかけて、滑らかな曲線と面で構成されている。過剰な装飾はなく、最上級セダンらしい落ち着き感が漂う。

  • 【アルファロメオ/ジュリア ヴェローチェ】
    全長× 全幅× 全高:4655×1865×1435mm
    ホイールベース:2820mm
    車両重量:1670kg
    エンジン:直列4気筒DOHCターボ/1995㏄
    最高出力:280PS/5250rpm
    最大トルク:40.8㎏ -m/2250rpm
    駆動方式:4輪駆動
    燃料消費率:12.0km/l(JC08モード)
    使用燃料:無鉛プレミアムガソリン 58L
    ミッション:8速自動変速機
    サスペンション:前:ダブルウィッシュボーン 後:マルチリンク
    ブレーキ形式:前・後:ベンチレーテッドディスク
    乗車定員:5名
    車両価格:597万円(税込み)
    問い合わせ:アルファコンタクト 電話:0120・779・159

 

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2018年1月号より転載しました。

 

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