山々が紅く萌える秋は、写真愛好家の腕が鳴る季節。紅葉を撮ってはその色合いに思わず溜息を漏らし、落ち葉に歩く恋人たちを撮ってはその画に満足したいところだろう。
しかし、ファインダーを遥か上空に向けてみると、そこにも秋らしい被写体があることに気づく。「秋の空」。秋を代表する風景でありながらも、撮影の腕が問われる難しい被写体である。
そんな難敵の撮影方法を、ニコンカレッジ講師である芳賀健二氏の作例を参考にご紹介しよう。
どこまでも続くうろこ雲の様子を表現するために、広角レンズの20mmを選択して撮影したという上の写真は、壮大でありながらも緻密に計算された一枚となっている。
山並を写真下部に少し入れることによって、雲の広がりとスケール感を表現。壮大な連峰が小さく見えてしまうほど、どこまでも広がる秋の空に思わず引き込まれてしまいそうだ。
この撮影は、日が昇ってほどない早朝。AF-S NIKKOR 18-35mm f/3.5-4.5G ED、画角100°(FXフォーマット時)の超広角域からの約1.9倍超広角ズームレンズを使用して行われた。プラス補正(露出)で雲の白さを際立たせ、早朝の斜光線で雲の凹凸感を出すことに成功している。
次に、昼の写真はどうだろう?
下の一枚は、わらぶき屋根を一部入れて、やや郷愁を誘う写真に仕上がっている。ここでも広角レンズを使用して空の広がり感が表現されている。空を撮る際には、広角レンズを使用して下部に対比となる静物を入れるのがひとつのコツだ。
最後に、赤味が心に刺さる夕焼け空の写真を紹介しておこう。夕方にかけ空の状態が変わり、雲が切れ始め色づき始めた瞬間を見事に捉えた一枚だ。
露出補正は「-2.0」を選択。ホワイトバランスは晴天日陰に設定することによって、赤味を増幅させている。
以上、ご覧にいれたこれらの写真は、ニコン公式ホームページ内にある『Enjoy ニコン 好きな写真の撮り方レシピ「秋空に浮かぶ雲をドラマチックに見せる」』にて掲載されている。
他にも秋に関連する撮影レシピが満載のニコンカレッジで写真の腕を磨き、今年の秋はぜひ「納得の一枚」を残してほしい。
撮影/芳賀健二(はが けんじ)
四季折々の自然風景を追いかけて光、風、そして空気を意識しながら作品作りをしている。 また被写体を見つける楽しみと、出会いの新鮮さを求めての、街スナップにも力を入れている。今までに4冊の写真集とニコンサロンなどで12回の写真展を開催。福島県出身。現ニコンカレッジ講師担当。日本写真作家協会(JPA)会員。
【参考リンク】
※ Enjoy ニコン 好きな写真の撮り方レシピ「秋空に浮かぶ雲をドラマチックに見せる」
※ ニコンカレッジ
取材・文/田中十兄