日本統治時代の台湾で活躍した異色の油彩画家、立石鐵臣(たていし・てつおみ)の回顧展が、東京の府中市美術館で開催されています。

立石鐵臣《春》〔1973年 油彩 個人蔵〕

立石鐵臣《春》〔1973年 油彩 個人蔵〕

立石鐵臣(1905-1980)は、父の勤務先の台湾に生まれ、6歳で日本に帰国してからは16歳で跡部青瀾に師事して日本画を学びましたが、後に岸田劉生、梅原龍三郎に学んで洋画に進みました。

26歳のとき、梅原龍三郎の勧めで日本統治時代の台湾にわたり、以後11年間、台湾の洋画界で活躍しました。戦後に日本に引き揚げてからは、作品を発表するかたわら、昆虫観察で培った科学的な眼で子ども向けの図鑑や絵本に動植物の細密画を多数描きました。

本展は、台湾で高く評価されている日本人画家・立石鐵臣の画業を、約160点の作品により振り返ります。

立石鐵臣《昆虫》(原画)〔1963-1964年 個人蔵〕

立石鐵臣《昆虫》(原画)〔1963-1964年 個人蔵〕

本展の見どころを、府中市美術館・学芸係長の志賀秀孝さんにうかがいました。

「立石鐵臣は、日本画とか洋画といった普通のジャンルにおさまらない画家です。流派を超えて自由なのです。

代表作の《春》も、細密画のようであったり、デザイン画のようであったり、シュールであったり、見るものに現実と空想をさまよわせる不思議な世界があります。空の下に描かれた花々は忘れ得ぬ故郷である台湾の空へのお供えであり、細密画の域を超えて命の輝きを放っています。

私には、この作品の根底に流れるのは台湾へのオマージュであるとみています。絵とは何か、絵は描くものにとっても見るものにとってももっと自由であっていいと、立石は言っているように思います。皆さんもご自身の眼で自由にお楽しみください」

本展を機に日本での再評価が期待される、知られざる画家の本格的な展覧会です。ぜひ足をお運びください。

【麗しき故郷「台湾」に捧ぐ-立石鐵臣展】
■会場/府中市美術館(公式サイトはこちら
■会期/2016年5月21日(土)~7月3日(日)
■住所/府中市美術館:東京都府中市浅間町1-3
■電話番号/03・5777・8600(ハローダイヤル)
■料金/一般700円 大高生350円 中小生150円
■開館時間/10時から17時まで(企画展への入場は16時30分まで)
■休館日/月曜日
■アクセス/京王線府中駅より「ちゅうバス」(多磨町行き)で「府中市美術館」下車すぐ、または京王線東府中駅北口より徒歩約17分

 

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