
これが堀口絹子さんが考案した「ふかふか玉子かけご飯」だ。
特別な素材を用意したり、複雑な調理をせずとも、普段味わっている玉子かけご飯が、さらに美味しくなる方法がある。その〝妙技”ともいえる作り方を教えてくれたのは、鶏卵生産会社の大手「イセ食品」に勤務する堀口絹子さんである。
堀口さんは、こう語る。
「今の会社に勤める前は、卵の味はどれも同じだろうと思っていました。ところが、この会社に就職し、弊社の主力商品である『森のたまご』を食べて、その味に驚かされました。黄身にコクがあって、とても美味しかったのです」
卵の美味しさを知ってからは、堀口さんは毎日、玉子かけご飯を食べるようになったのだが──。
「じつは白身の食感が苦手でして。白身は主に濃厚卵白というプリッと弾力の強い部分と、水様卵白というサラッとした部分でできています。卵は新鮮なものほど、濃厚卵白の占める割合が大きく、どろっとした食感が強い。私はこの食感がどうしても好きになれませんでした」
■「ふかふか玉子かけご飯」の誕生
新鮮な卵ゆえの食感、これをどうにか食べやすくできないものか……。試行錯誤の末に堀口さんがたどり着いたのが、「白身だけを熱々のご飯に混ぜ合わせる」という手法だった。
「白身のタンパク質はご飯の熱によって固まり、よくかき混ぜることで分解されて泡立ち、ご飯ひと粒ひと粒をコーティングします。これで、どろっとした白身の食感は解消されました」
メレンゲ状の白身に包まれた、ふかふかなご飯の上に、黄身をポンとのせる。これが堀口さんお薦めの「ふかふか玉子かけご飯」だ。
では、堀口さんが考案した「ふかふか玉子かけご飯」の作り方を紹介しよう。

①冷蔵庫で保管している卵を室温に戻す。卵を割る際は、まな板などの平らな面に真上から当てると、殻、の破片が中に入り込むのを防げる。

②器をふたつ用意し、その一方に白身だけを割り入れる。殻に割れ目を入れれば、そこからするっと白身が流れ落ちる。

③殻からすべて白身が流れ出たら、殻を半分に割り、黄身をすくい上げるように乗せ入れ、もうひとつの容器に移す。

④熱々のご飯(炊きたてが望ましい)を茶碗に盛り、中央にへこみをつけて、そこに白身だけを流し入れる。

⑤流し入れた白身をご飯に絡ませながら、よくかき混ぜる。30~60秒間かき混ぜ続けると、白身が泡立ってくる。

⑥泡に包まれたご飯の中央を少しへこませ、そこに黄身をのせて、好みの量の醬油を垂らせば「ふかふか玉子かけご飯」の完成。
この作り方なら、黄身の旨みを充分味わうことができ、ご飯に混ぜ合わせる黄身の割合を調節することで、味わいの変化も楽しめる。さらに、泡立った白身が醬油を受け止めるので、茶碗の底に流れ落ちることがなく、醬油の分量を加減しやすいという利点もある。
あとは黄身を崩しながら、味わいの変化を楽しむのみ。

食べる際は、少しずつ黄身を崩していく。泡に包まれたご飯に混ぜる黄身の分量を変えることで、異なる味わいを楽しめる。

ある程度食べたら、黄身をすべてご飯と混ぜ合わせてもいい。空気を含んだ玉子かけご飯は食感が軽く、優しい味わいである。
いかがだろうか。白身の食感が苦手でなくても、ちょっと試してみたい「ひと手間」である。

堀口さんが玉子かけご飯に薦める「森のたまご」。ビタミンEが一般の卵の約10倍、DHAが約2.17倍含まれ、黄身にコクがある。スーパーなどで手に入る。
指導/堀口絹子さん(鶏卵生産会社「イセ食品」マーケティング推進室課長)
文・写真/片山虎之介
(本記事はサライ2015年6月号に掲載されたものです)
