文/鈴木拓也
デジタルカメラもスマホカメラも低廉化・高性能化が進み、これまで難易度が高いと思われてきた被写体にも気軽にチャレンジしやすくなった。
それでも、なかなか敷居が高いのが、満天の夜空にきらめく星々の写真。
「高価な機材が必要」「特別な知識・技術の習得が大変」と思って、二の足を踏んでいる方は多いのではないだろうか?
確かに、日中の撮影では使わない三脚は必要になるし、新たに知っておくべきポイントもある。
とはいえ、最初の一歩は意外と簡単だ。
今回は、入門書の『星を楽しむ 星空写真の写しかた』から、星空撮影の基本の「キ」を、かいつまんで紹介しよう。
■星空撮影に必需品の「三脚」選び
これは星空に限らない話だが、夜景を撮る際は露出時間が増えるため、手ぶれの影響をなくす三脚が必需となる。
カメラショップを覗くと多種多様な三脚があって迷うが、すすめられているのは「中型三脚」。「このクラスであれば広角レンズでの星空の風景写真や、ポータブル赤道義に広角レンズを装着したカメラでガイド撮影も可能」というのが、その理由。ちょっとの風では揺れず、かといって重すぎないという点でも、このクラスがいい。
■スマホで星空を撮る
「スマホのカメラはおもちゃみたいなもの」というのは、もはや過去の話。最近の機種に搭載されているスマホには、星空の撮影に堪える性能を持ったものがある。
スマホで撮影するにも三脚は必要だが、あいにくスマホ本体には雲台に取り付けるネジ穴はないので、スマホ用三脚アダプターを用意する。また、シャッターを切った時のカメラブレを避けるため、リモコンやスマホ用のレリーズが必要で、これらは100均でも入手できる。あるいは、セルフタイマー機能を使ってブレを回避する手もある。
三脚を設置し、スマホを固定して空に向けたら、以下のとおりスマホ画面で一連の設定をする。
・撮影モードを(オートではなく)マニュアルにして各種設定ができるようにする。
・マニュアルフォーカスを選んでピントを無限遠に設定。
・シャッタースピードを長め(30秒など)に設定。
・感度を最高感度(3200)に、ホワイトバランスは太陽光に設定。
・構図を決めて試し撮りし、露出を調整。
■コンパクトデジタルカメラで星空を撮る
入門者向けカメラとみなされることもあるコンデジだが、機能が豊富なものだと、夜景モード、星空モード、星空タイムラプスモードなどが付いている。こうしたモードがあれば、星空の撮影も手軽にできる。ない場合は、スマホと同様にマニュアルモードにして、以下の設定を行う。
・感度を高めに設定。
・絞り(F値)を開放にし、シャッタースピードを設定。
・ピントを無限遠に設定。
・構図を決め、ライブビューを見ながらピントを合わせ、まずは試し撮り。露出を調整したら、撮影に臨む。
上の写真は、インターバル撮影機能を使い、比較明合成という画像処理で得られたものだ。この比較明合成機能がなくても、「フリーソフトや、スマートフォンのカメラアプリ」で同じことができるという(詳細は本書参照)。こうした「プロじゃないと無理でしょう?」と思っていた撮影テクニックも、割と容易にマスターできる。応用編として、月食の連続写真、人工衛星、さらにはオーロラの撮影法まで記されているし、赤道義を用いたガイド撮影にも詳しい。
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本書は、天文台の台長とベテランの天体写真家の共著だが、小難しい解説は一切なく、ISO感度やピントの合わせ方など、大半のカメラ入門者が漠然としか把握していないポイントも懇切丁寧に教えてくれる。定年を機にカメラの「学び直し」を考える方にも役立つ内容なので、チェックしておくとよいだろう。
【今日の学び直しに役立つ1冊】
『星を楽しむ 星空写真の写しかた』
http://www.seibundo-shinkosha.net/products/detail.php?product_id=6204
(大野裕明・榎本司著、本体1,800円+税、誠文堂新光社)
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。