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選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)

ずしりと手応えのある音楽である。現代を代表するドイツのヴァイオリニスト、アンネ=ゾフィー・ムターが、ポーランドの作曲家クシシュトフ・ペンデレツキの85歳の記念として録音した2枚組アルバム『ペンデレツキへのオマージュ』には本物の輝きがある。

かつて前衛音楽の闘士として、破壊的作品を書き続けていたペンデレツキは、現在は古典的でロマンティックな作風へと回帰していることで知られる。それはある意味勇気ある路線転換とも言えるものだが、そこには伝統への敬意と、不安と迷いの大切さと、新たな知恵があることを、ムターは緊迫感あふれるドラマティックな演奏で明らかにしてくれる。

少女時代に帝王カラヤンの秘蔵っ子としてデビューしたムターにとって、ルトスワフスキやプレヴィンのような偉大な作曲家たちと出会うことは常に大きな成長の糧であった。ペンデレツキもまたその一人である。ジャケット内の写真の数々も、二人の音楽家の尊敬しあう姿を伝えて美しい。

【今日の一枚】
ペンデレツキへのオマージュ
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
クシシュトフ・ペンデレツキ指揮ロンドン交響楽団、他

発売:ユニバーサル・ミュージック 
電話:045・330・7213
4630円(2枚組)

文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)

※この記事は『サライ』本誌2019年4月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。

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