夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。水曜日は「クルマ」をテーマに、演出家のテリー伊藤さんが執筆します。

文/テリー伊藤(演出家)

こんにちは、テリー伊藤です!
僕の連載コラムも、いよいよ最終回。 今回は、僕たちがクルマと末永く
付き合うための心構えについてお話ししたいと思います。

時代の スピードは早まるからこそ、クルマはゆっくりいきましょう。

■安全運転はカッコいい!!

残念なことに、年配ドライバーの事故が増えています。一番多いのはアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いでしょうか。自分ではちゃんと運転しているつもりでも、操作を誤ったり、安全確認ができていなかったり、急に体調を崩すことだってありえます。僕も、いつかは運転免許を返納する日が来るのだろうか?と思いながら、毎日のようにハンドルを握っていますよ。

ちなみに僕、40歳の頃から超が付くほどの安全運転を徹底しています。住宅街の交差路地で、こちらに一時停止義務がない場所でも止まるくらいに。だって、横から走ってくる相手がちゃんと止まるかなんて、誰にもわからないじゃないですか。自転車だって飛び出してくるかもしれない。自分がどんなに気をつけていても、ダメな時はダメなんです。僕は仕事柄、なにかあったらウェブニュースに取り上げられるかもしれない……。

もちろん、だからってわけではないけれど、とにかく事故は起こさないに限るんです。

起こしたくなくても、ときには起きてしまうことだから、とにかく注意するしかない。

それが、クルマとヒトに対する愛ですね。

高速に乗っても、基本的に走るのは左車線。時間によってはテレビ局が車を出してくれることもあったりするんですが、運転手さんに「急げ!」っていう人は多いだろうけど、「急ぐな!」っていうのは僕くらいなもんでしょうね。今ではテレビの人たちの間でも知れ渡っていて、いちいち言わなくても運転手さんが超安全運転を心がけてくれるようになりました。

皆さんも、時には飛ばしたいという気持ちもあるでしょうけど、己を律して年齢や体調に合った運転に徹してください。進歩している安全技術も見逃せません。最近のモデルは、なにかと自動化で、操る感覚が薄くなっていくことに抵抗がないと言ったら嘘になりますが、普及しつつある自動ブレーキ、これは絶対あったほうがいいですね!

■ビートに乗って、ゆっくり行こうよ

もちろん、ゆっくりだからと言って、走る楽しみを諦めてはいけません。歳をとったからといってラクな服を着ていると、心まで老いてしまいます。銀座あたりで、たまにヒールを履いたオシャレな高齢の女性を見かけると、ステキだな〜と思うことありますよね?

クルマと向き合うにも、あの感覚が必要です!

銀座といえば、先日学生時代の同窓会をやりました。僕はみんなに「オシャレしてこいよ。最低でもジャケットは着てこい!」って言ったんです。そうしたらみんなブレザーを羽織ってきていたりして、なんだかヨーロッパの年寄り集団みたいで、気分良かったですよ。

その日、友達のひとりがケーターハムのスーパーセブンに乗ってきたんです。大昔から設計が変わっていない、シンプルでプリミティブなオープンスポーツカーに、彼はテーラードジャケットを羽織り、ゴーグルをはめてきました。「これに毎日乗ってるの?」って聞いたら、日曜の夜明け限定で、首都高速のレインボーブリッジを通るルートを3周しているんだとか。カッコいいな〜と思いましたね。

僕も負けずにカッコいいクルマ持ってますよ! ホンダのビート!最近なかなか乗れてなくて寂しいけれど。バイクみたいな高回転エンジンで、これこそスポーツカー。軽自動車だからそんなにスピードは出ないけど、むしろ僕には好都合。久々に夜の空いている第三京浜を、幌を開けて走ってみたくなりました!

この連載を読んで、「テリーの奴、いい歳してまだクルマにこだわっててしょーがねーな〜」と思っている方もいらっしゃるでしょう。でもね、僕は歳なんてどうでもいいと思ってるんです。そりゃ、誰しも物理的に歳をとります。ただ、気持ちも歳をとるかどうかは完全に自分次第。世の中、自分の好きにできることは少ないけれど、気持ちが歳をとらないようにすることは自分で決められるんです!これってステキなことじゃないですか?

だから、僕はまだまだクルマ選びをやめません。年相応のクルマ選びもしません。

時代と寄り添いつつも、自分が本当にカッコいいと思いクルマ選びをしたいもんです。

だから、まだまだ勉強は続くのです!

【今週のテリー・カー:ホンダ・ビート】

1990年代に作られていた、ふたり乗りの軽スポーツカー。656ccのエンジンは最高出力を8,100回転で発揮する高回転型で、フィーリングも抜群。トランスミッションはMTのみ。中古車は現在も人気で、下は20万円程度から見つけられるものの、状態のいいクルマとなると150万円以上の値札を付けるものも。選択肢を実質的な後継モデルのS660(新車価格183万4,000円~)に広げるのもいい。(編集部)

文/テリー伊藤(てりー・いとう) 
昭和24年、東京生まれ。演出家。数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在は多忙な仕事の合間に、慶應義塾大学 大学院で人間心理を学んでいる。

 

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