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【夕刊サライ/テリー伊藤】心が満たされないときには(テリー伊藤のクルマコラム 第11回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。水曜日は「クルマ」をテーマに、演出家のテリー伊藤さんが執筆します。

文/テリー伊藤(演出家)

こんにちは、テリー伊藤です!

僕はいま大学院に通っています。仕事の合間を縫って、東京から湘南まで通っているんです。大変なことも多いけど、発見も多く、刺激的な毎日です。今回は僕の近況を踏まえながら、学びとクルマについて語ってみたいと思います。

“ままならない”ものを持つって幸せじゃないですか。

■物欲を満たしているだけでは空しい

最近物欲がなくなったと思うことありませんか? とはいっても僕はクルマと同じくらい服が好きで、今でもお店で気に入ったものを見つけるとすぐに買ってしまうのですが、それでも近頃どこか満たされていない気がするんです。20代の頃にフォルクスワーゲン・ビートルを買ったときのような充足感は、どうしても得られない。これからも、きっとあのときの興奮を超えることは、もうないだろうと思ってしまうのです。

モノへの憧れは、貧しい時代に生まれたからだろうと思っていました。でも様々なものを自分で買ってわかったことは、「結局、物欲とは満たされないものなんだ」ということ。すると、「じゃあ、俺の人生は何だったんだろう…」という思いがよぎるようになり、それで僕は「学んでみよう」と思ったんです。物欲は満たされてしまうけれど、学びはままならないから。

もちろん、大学院は大変です。大学の授業までは理解できるけど、院になるとついていくので精一杯。パワーポイントで資料を作るのですが、その使い方から覚える有様で……。発表もダメ出しの連続。でも、やりがいはあります。苦しいけれど、帰り道にむなしさがない。満たされた気分になれるんです。これが手に入れた時点で満たされてしまう物欲とは違うところなんだろうなと思うんです。

大学院にはクルマで通っています。キャンパスの近くに駐車場を借りているんです。そこに来る若い学生たちを見ていると、みんなトヨタ・アクアとかスズキ・ワゴンRなんかで来ている。小さくて手頃なクルマに定員いっぱいで乗って、ワーワーキャーキャーいってる様子がホント楽しそうでね〜。クルマってそういう風に楽しむもんだって思えるんです。

■お嬢様と出会うなら駅前で!

そんな彼らを見ていると、昔を思い出します。僕の頃は、決して真面目な学生ではなかったのでずっと大学にいてもしょうがないと思い、街に出て学んでいました。女子大の面々と、合同でフォークコンサートを企画したり…。僕はそのときひらめきましたね。

「これからはお嬢様だ!」と。お嬢様と知り合うにはどうしたらいいか。学校で声を掛けてもいぶかしがられるのが関の山。それで僕は成城学園前とか田園調布に向かいました。それも平日の夕方に。そんな時間帯に電車を下りてくる女子大生は、間違いなくお嬢様です。地元の駅で声を掛けてくるやつなんてなかなかいないから、話しを聞いてくれるわけ。場所は大事だということを学びましたね(笑)

場所と言えば、銀座も元気がありました。集まっていたのは数寄屋橋交差点の、ソニービルあたり。(※2018年7月に銀座ソニーパークとしてリニューアルオープン予定)

クルマはイギリスやドイツのクルマのほうが雰囲気あるし目立つけど、だからといってMGのスポーツカーに乗って行ってもダメ。ふたりしか乗れませんもの。人気があるのはビートルとかミニでしたね。

昔も今も、若い世代の感覚って、実はあまり変わっていないと思います。先日、大学院の女の子たちに誘われて合コン!?に行きました。駅前のもつ鍋屋に集まって。どう見ても僕は単なる金づるなんだけど、それはそれで楽しいものです。恋愛のように、なかなかうまくいかないことにこそ挑戦する価値があり、そのひとつが「学び」だと思うんです。

サライ世代の皆さんのなかで、心のどこかで満たされない気持ちがある方は、学びに生きがいをみつけてみませんか? 別に大学院じゃなくて、近くのカルチャーセンターでもいいんです。そして、学びはこもっているばかりじゃダメ。フィールドワークも必要ですね。

だからやっぱりクルマがあると便利です。高級車である必要なんかありません。学生と同じ気分で、アクアとかワゴンRで楽しむもよし! “ままならない”クルマを手に入れて格闘しながら乗るのもかっこいいですね。

【今週のテリー・カー:ローバー(BMC)・ミニ】

1950年代半ば、スエズ動乱で石油価格が高騰にしたのに伴い、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)は経済的な小型大衆車の開発に着手。同社のエンジニア、アレック・イシゴニスの設計による、革新的な横置きエンジン・前輪駆動のミニが誕生した。経済的で居住性に優れるミニは、モータースポーツでも活躍(写真)。シンプルで愛くるしいスタイリングとともに、20世紀の自動車文化を代表する傑作車として約40年にわたって製造された。(編集部)

文/テリー伊藤(てりー・いとう) 
昭和24年、東京生まれ。演出家。数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在は多忙な仕事の合間に、慶應義塾大学 大学院で人間心理を学んでいる。

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