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狩野派のいったい何が“革新的”だったのか?企画展《墨と金-狩野派の絵画-》

取材・文/藤田麻希

日本絵画の流派の一つである狩野派(かのうは)は、足利義政、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など、時の為政者に仕え、室町時代から幕末まで400年にわたって画壇の中心に君臨しました。

そんな狩野派の絵画を集めた展覧会《墨と金-狩野派の絵画-》が、東京の根津美術館で開催されています(~2月12日まで)。

梟鶏図 狩野山雪筆 2幅 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

同館学芸課長の野口剛さんに、今回の展覧会について伺いました。

「近世以前の日本の絵画というと、最近では若冲をはじめとする18世紀京都の個性派の画家や、琳派の画家が大変人気です。一方、狩野派は、よく名前は知られていますが、どちらかというと正統的でオーソドックスなイメージがあるかもしれません。今回の展覧会は、そうした狩野派のイメージに対する、「墨と金」という言葉に象徴される革新性や豊穣な美の世界をご紹介したいと思って企画しました。狩野派の新しさについて注目して見ていただければと思います」

では、何が狩野派の革新性なのでしょうか。展示作品から、いくつか例をご紹介しましょう。

狩野派以前の水墨画は、中国の有名画家の様式(=筆様/ひつよう)に倣って描かれていました。牧谿(もっけい)という画家ならば牧谿様、夏珪(かけい)の夏珪様、玉澗(ぎょくかん)の玉澗様と、画家の名前を挙げ、その画風で描いて欲しい、といった具合に絵画は注文されていました。

狩野派二代目の元信は、そんな状況を一変させました。細分化されていた様式を、書道の楷書・行書・草書のように、真体・行体・草体の3種類に整理したのです。

こうして狩野派のスタンダードが示されたことで、流派内の共通理解ができ、工房制作もスムーズになり、結果的に大規模な障壁画が制作しやすくなりました。

狩野元信筆と伝えられる6曲1双の屏風《養蚕機織図屏風(ようさんきしょくずびょうぶ)》は、硬い線と緻密な構図を特徴とする“真体”で描かれた屏風です。

養蚕機織図屏風(右隻) 伝 狩野元信筆 6曲1双 日本・室町時代 16世紀 根津美術館蔵

養蚕機織図屏風(左隻) 伝 狩野元信筆 6曲1双 日本・室町時代 16世紀 根津美術館蔵

ちなみに今回の展覧会の出品作は「伝元信(元信筆と伝えられている)」や「元信印(元信の印が押してある)」で、元信真筆とされるものは出ていませんが、これだけ元信風の作品が現存しているということは、元信が生み出したスタンダードが効率よく伝授されたことと同時に、いかに多くの弟子が元信画を学んだかを物語っています。

また、金をとりいれたことも狩野派の革新性を示しています。もともと、日本独自の画題を描く「やまと絵」というジャンルの画家は金を用いていましたが、狩野派のような中国風の絵を描く「漢画」の画家は、本場中国で主流の水墨画を描いており、金を用いることはなかったのです。

記録に残っている最も古い狩野派の金屏風制作は、明の皇帝に献上するためのものだったそうです。中国への贈り物用に、日本をアピールできる金を用いたことが想像されます。

江戸幕府の御用絵師になった狩野探幽の《両帝図屏風(りょうていずびょうぶ)》は、古代の中国の皇帝についての画題を、金箔、金雲、金砂子など、金をふんだんに使って表しています。まさに和漢融合の作品です。

金屏風は日本絵画の定番と考えられがちですが、中国スタイルの画家にとっては未開のジャンルだったのです。

両帝図屏風(右隻) 狩野探幽筆 6曲1双 日本・江戸時代 寛文元年(1661) 根津美術館蔵

両帝図屏風(左隻)狩野探幽筆 6曲1双 日本・江戸時代 寛文元年(1661) 根津美術館蔵

狩野派のさまざまな作品を新鮮な視点で見渡すことができる画期的な展覧会です。ぜひお運びください。

【企画展「墨と金-狩野派の絵画-」】
■会期/2018年1月10日(水)~2月12日(月・祝)
■会場:根津美術館
■住所:東京都港区南青山6-5-1
■電話番号:03・3400・2536
■公式サイト: http://www.nezu-muse.or.jp/
■開室時間:10~17時 ※入館は閉館の30分前まで
■休館日:毎週月曜(ただし、2月12日を除く)

取材・文/藤田麻希
美術ライター。明治学院大学大学院芸術学専攻修了。『美術手帖』などへの寄稿ほか、『日本美術全集』『超絶技巧!明治工芸の粋』『村上隆のスーパーフラット・コレクション』など展覧会図録や書籍の編集・執筆も担当。

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