左右ふたつに分かれたグリルはBMW伝統の顔。それを踏襲しつつ、7世代目となる新型車はグリルとヘッドライトがつながった。

文・石川真禧照(自動車生活探険家)

ドイツの自動車メーカーBMWの主力車種が約7年ぶりに全面改良された。7年というサイクルは日本車では長めだが、BMWではごく普通のこと。安全装備などは常に改良を施すが、ほとんど手を加えない内外装のデザインは、7年経っても古さを感じさせない。

先代と比べて全長は同じだが、30mmほど幅広くなった。低重心を追求した構造なので、高さは先代より約20mm低い。大きさを感じさせない造形だが、国産車の大型セダンと同等サイズ。

それでも新型車に乗ってみると、先代より格段に進化していることに驚かされる。今回紹介する中型車の5シリーズは、BMWの乗用車の中では世界の市場で最も売れている車。それだけに先進装備、安全装備の充実ぶりは極めて高い。

日本市場においてもBMWは販売台数の好調な輸入車のひとつで、昨年は前年比で10%近い販売増を記録している。

随所に機能美が感じられる上質感溢れる運転席まわり。無駄な装飾がなく、前方視界も良好で、運転に集中できる空間に仕上がっている。

計器類は昼間でも視認性に優れるデジタル式を採用。大径の計器はエンジン回転計の他にナビ画面や車両状況を表示する役目も果たす。

後席の着座位置はやや低め。足元中央に張り出しがあるので、左右1名ずつが快適。天井が高く、身長180cmの人でも圧迫感はない。

奥行きが深く、上下の高さも50cm以上確保された荷室。後席の背もたれは4:2:4の3分割で前倒しできるので、長尺物の運搬も可能だ。

■多彩な車種を用意する

BMWにはどのような車があるのか調べてみた。小型5ドア車の1シリーズから大型セダンの7シリーズを基本に、SUV、走行性重視のスポーツモデル、カブリオレなどじつに多彩だ。

動力源の種類も多い。ガソリンエンジンをはじめ、ディーゼルエンジン、電気自動車、ガソリンエンジンとモーターを併用するプラグインハイブリッドなどもある。車種にもよるが、エンジンは3気筒、4気筒、6気筒、8気筒、12気筒まで用意する。

5シリーズの車型は4ドアセダンの他にツーリングと名付けられたステーションワゴンや、グランツーリスモというクーペに近い5ドア車などがあり、エンジンや仕様別に14もの車種が揃う。

標準車種は後輪駆動だが、電子制御で4輪を駆動する4WDもある。これほどの品揃えの多さは、国産車では見られない。

今回は新型5シリーズから、523dという2lディーゼルターボの4ドアセダンを紹介したい。BMWのセダン群の中で5シリーズは7シリーズに次ぐ上級車種で、欧州、北米、中国などで人気が高い。日本では3シリーズの小型セダンが売れ筋だが、近年は5シリーズ・セダンの評判も高まっている。

5シリーズの新型エンジンはガソリン、ディーゼルともにターボ付き(写真は523dの直列4気筒クリーン・ディーゼルエンジン)。

5シリーズは中型車に位置づけられるが、そのセダンの全長は約5m、全幅は1.9m近くある。国産の4ドアセダンと比較すると、トヨタの大型セダン、クラウン マジェスタとほぼ同じ大きさだ。

先代より約80kg軽量化され、空気抵抗の改善などにより、実燃費は一般道では13~15km/lを記録。高速道路での巡航時はカタログ値を上回る24~25km/lだった。また、走行時の静粛性と安定性はライバル車を圧倒している。

安全面でも先進の技術が投入され、ステレオカメラと5つのミリ波レーダーが周囲の車や歩行者などを常に監視。これによって交通状況に合わせて事故を防ぐ様々な安全機能が働くと同時に、車線逸脱防止などの操舵支援も行なう。

この夏には、5シリーズ・セダンにプラグインハイブリッド車が加わる予定だ。

車体後部のデザインは先代から大きな変化はない。車体側面まで回り込んだ横長の尾灯は、BMWの乗用車群に共通するデザイン。

【今日のクルマ】
『523d ラグジュアリー』/BMW
■全長×全幅×全高:4945×1870×1480mm
■ホイールベース:2975mm
■車両重量:1700kg
■エンジン/排気量:直列4気筒DOHCディーゼルターボ/1995cc
■最高出力:190PS/4000rpm
■最大トルク:40.8kg-m/1750~2500rpm
■駆動方式:後輪駆動
■燃料消費率:21.5km/l(JC08モード)
■使用燃料:軽油/66l
■ミッション形式:8速自動変速機
■サスペンション:前:ダブルウィッシュボーン式 後:5リンク式
■ブレーキ形式:前・後:ベンチレーテッドディスク
■乗車定員:5名
■車両価格:768万円
■問い合わせ:BMWカスタマーセンター 電:70120・269・437

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
写真/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2017年7月号の「名車を利く」欄からの転載です。

 

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