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この金は「なまけ賃」なり(須藤憲三)【漱石と明治人のことば139】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「なまけ賃」
--須藤憲三

須藤憲三は、雑誌『少年倶楽部』で、デビュー当時の大佛次郎などを担当した編集者。名編集長として名高い加藤謙一のあとを受けて同誌の編集長をつとめた。明治気質のすぐれた編集者であった。

その須藤憲三が、椋鳩十に手紙を書いたのは、昭和8年(1933)のことだった。

「あなたの山窩小説を読んで、その面白味と野性味に圧倒されました。あなたならきっと、子どもの喜ぶ物語が書けると思います。あの山窩小説に漲っている野性的なにおいの強い少年小説を是非書いてくれませんか」

須藤は新しい才能の発掘のため、つねに目配りをしていた。鹿児島で学校教師をしていた椋鳩十は、この少し前、山窩小説『山窩調』を自費出版して好評を博した。須藤はそれに目をとめ、こんな手紙を書いたのである。ちなみに、山窩小説とは、村里に定住せず、山野や河原に寝泊まりしながら漂泊する人々の暮らしに材をとった物語と言えようか。

『少年倶楽部』は中央のメジャー雑誌。須藤の手紙は、地方の無名の新人にとっては、ありがたい誘いであったが、少年向けという未知の世界にすぐには踏み出す自信もなく、椋は「いつか折があったら」というような曖昧な返事をしたまま、時をやり過ごした。

そのまま3年の歳月が過ぎた昭和11年(1936)の暮れ、椋鳩十は病身の家族を抱え、年越しのやりくりに窮していた。そこに予期せぬ突然の書留郵便が届いた。差出人は『少年倶楽部』編集長の須藤憲三。開封してみると、中から出てきたのは1枚の百円札。当時としては、かなりのまとまった金額。それも「なまけ賃」と書いた紙にくるまれていたというのである。

須藤はどうやら椋の苦境を察知し、この書留郵便を送ってきてくれたらしかった。

人生、意気に感ず。

「どうあっても書かねばならない」

椋はそう決意を固めた。そうして、緻密な動物観察や猟師からの取材を経て、『山の太郎熊』を書いた。ここから彼独自の動物児童文学の世界が開けていった。

それにしても、「なまけ賃」とは、なんと愛情深いことばであろうか。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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