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「この肉体はいつ何時どんな変に会わないとも限らない」(夏目漱石)【漱石と明治人のことば36】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「この肉体はいつ何時どんな変に会わないとも限らない」
--夏目漱石

夏目漱石の絶筆となった小説『明暗』より。このあとさらに、「それどころか、今現にどんな変がこの肉体のうちに起こりつつあるかも知れない。そうして自分はまったく知らずにいる。恐ろしいことだ」とつづく。

自分の体でありながら、自分の体の中で起こっている変化に、人間はなかなか気づくことはできない。ぴんぴんしていたはずが、いきなり思わぬ病気を発症し、冥界に入ることもある。寿命など、わかるはずもない。

先日、俳優の松方弘樹さんが他界していたことが報道された。死因は脳リンパ腫。テレビ画面や映画のスクリーンの中で躍動していた姿はいかにも元気一杯で、病気とは縁遠いようにも思われたが、昨年2月に脳の異常が見つかり療養生活を送っていた。享年74は、超高齢化社会を迎えたわが国では、いささか短めであった気もするが、そうした言い方も当たるまい。

高倉健、菅原文太ともども、近年、昭和の映画スターが次々と天界にのぼっている。

ふと、作家の城山三郎が残した言葉を思う。「人生の持ち時間に大差はない。いかに深く生きるか、である」。合掌。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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