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「私にそう思えなければ、到底受売りをすべきではないのです」(夏目漱石)【漱石と明治人のことば28】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「たとえば西洋人がこれは立派な詩だとか、口調が大変いいとかいっても、それはその西洋人の見るところで、私の参考にならんことはないにしても、私にそう思えなければ、到底受売りをすべきはずのものではないのです」
--夏目漱石

夏目漱石が大正3年(1914)11月、学習院でおこなった講演筆記に補筆してまとめた『私の個人主義』より。

このあとさらに、漱石は「私が独立した一個の日本人であって、決して英国人の奴婢(ぬひ)ではない以上はこれくらいの見識は国民の一員として具えていなければならない上に、世界に共通な正直という徳義を重んずる点から見ても、私は私の意見を曲げてはならないのです」と述べていく。「無批判な西洋追従主義に走ることなく、日本人としての誇りを持て」というわけである。

このことば、実は、「西洋人」を他者に、「詩」をさまざまなものごとに置き換えることもできる。誰かが「あれはいい、悪い」と批評すると、それを鵜呑みにして、まるで自分自身の意見であるかのように受け売りをする。そんなことでは情けない。

吉田兼好が「何事にも先達はあらまほしきものなり」と述べた如く、他者の意見を道案内にして「参考」にするのはいいけれど、最終的にはそれを自分の中で消化していかなければ意味はない、ということだろう。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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