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「理想のあるものは歩くべき道を知っている」(夏目漱石)【漱石と明治人のことば13】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】

「理想のあるものは歩くべき道を知っている。大なる理想のあるものは大なる道をあるく。迷子とは違う。どうあってもこの道をあるかねばやまぬ。迷いたくても迷えんのである。魂がこちらこちらと教えるからである」
--夏目漱石

小説『野分』の中の一節。要は、「確かな理想を持てば、自ずと進むべき道は見えてくる」ということだろう。

物事に取り組んでいくとき、いきなり高い目標だけを掲げるのでなく、達成可能な具体的目標を設定し、それをひとつひとつクリアしていくのがいい。そういう手法を勧める人は少なくない。確かにそう。かつて私が取材したプロ野球の桑田真澄投手なども、そうしたスポーツ理論を取り入れていた。

でも、一方で、最終的にどんなところにたどり着こうとするのか、こうありたいと目指す志のようなものがなければ、中身は空虚なものになりかねない。それが漱石の言う「理想」だ。桑田投手も、自分の中に「投手のイデア」ともいうべき理想像を持ち、さらには野球を通じて人間力を高めるのだという心棒のようなものを持っていた。だからこそ、あの小さな体で、大きな怪我も乗り越えて、あれだけの成績を残せたのだし、解説者や指導者としても確かな道筋を歩みはじめているのだろう。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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