松前藩とカムチャツカ半島

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I:さて、『べらぼう』では、松前藩のことが取り上げられていたのですが、その渦中に、カムチャツカ半島付近で大地震が発生し、日本の太平洋側を中心に津波警報が発出されました。
A:なんだか奇縁ですね。カムチャツカ半島というと現代人にとっては、あまり知らない土地なんでしょうが、『べらぼう』劇中でも登場している『赤蝦夷風説考』にも登場する場所です。ロシア帝国の南下は、重大事案で、その起点のひとつがカムチャツカ半島ですからね。しかも、松前藩は、当時は、正確な情報を幕府にあげていなかったようです。
I:樺太やカムチャツカ半島以南の千島列島など、帰属が不確定な時代です。田沼意次(演・渡辺謙)らが、蝦夷をどうしようとしていたのか、樺太は? 千島列島は? と深掘りしてみるとおもしろいかもしれません。
A:松前藩のはるか昔になりますが、津軽半島の十三湊(とさみなと)を本拠にしていた安藤(安東)一族は、カムチャツカどころか、アムール川沿岸まで交易の輪を広げていたともいわれています。ただ、安藤氏は戦国の荒波に抗しきれずに、秋田氏と姓を変え、江戸時代は三春藩(福島県)に移封していました。
I:松前氏はもともと安藤氏の配下から独立していたのですから、カムチャツカ半島などとの交易を行なっていてもおかしくはないのですね。
A:なにはともあれ、田沼意次らが失脚していなければ、蝦夷や千島列島、カムチャツカ半島と日本の歴史もやや違ったものになっていたかも、というのも『べらぼう』を楽しむもうひとつの視点ではあります。

●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ~べらぼう~蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。同書には、『娼妃地理記』、「辞闘戦新根(ことばたたかいあたらいいのね)」も掲載。「とんだ茶釜」「大木の切り口太いの根」「鯛の味噌吸」のキャラクターも掲載。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
