正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。
Google 先⽣やデジタルデバイスの出現により、便利になった反⾯、情報の中⾝については⼗分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいてもいいかもしれません。
今回の「脳トレ漢字」は、「屯する」をご紹介します。「とんする」とも読めますが違った読み方が一般的です。実際に読み書きなどして漢字への造詣を深めてみてください。

「屯する」は何と読む?
「屯する」の読み方をご存じでしょうか? 「とんする」とも読みますが……
正解は……
「たむろする」です。
「屯」という漢字は、音読みでは「トン」と読みます。「駐屯地(ちゅうとんち)」や「屯田兵(とんでんへい)」などの熟語でお馴染みですね。そのため、「屯する」もつい「とんする」と読んでしまいがちですが、これは一般的な読み方ではありません。「屯する」と書かれていた場合は、「たむろする」と読むのが正解です。
『小学館デジタル大辞泉』では「一つ所に大ぜいの人が集まる。兵隊が群れ集まる」と説明されています。
「屯する」という言葉、どこかで聞いたことがあるという方も多いかもしれません。例えば「若者が駅前に屯している」などの日常的な表現として使われることがあります。「屯」とは人が集まっている様子や、何人もの人が群がっている状態を指します。
「屯する」の由来
では、なぜ「屯」を「たむろ」と読むのでしょうか。その由来を探ってみましょう。
まず、「屯」という漢字の成り立ちを見ていきます。この字は、幼児が髪を束ね、飾った形をかたどった様子を描いた象形文字とされています。

その形から、多くのものを束ね、物が一箇所に「集まる」「とどまる」「かたまる」といった意味が派生しました。駐屯地の「屯」が、軍隊などが一時的にとどまる場所を意味するのも、この「とどまる」という意味合いからです。
「屯する」と現代社会
例えば、「若者たちが駅前広場に屯していた」というと、なんとなく不安な雰囲気や騒々しさを感じさせます。一方、「市民が公園に屯して平和的なデモを行った」というと、ある種の連帯感や社会的なメッセージ性が感じられます。このように、「屯する」という言葉は、集まっている人々の様子や状況をより具体的に描写するのに役立つ表現です。
さらに、注目したいのが「オンライン上のたむろ」。SNSやチャットアプリを利用して、顔を合わせずとも多くの人々が一か所(仮想的な空間)に集まって盛んに議論したり情報を共有したりすることも、広義には「屯する」という行為と言えるのではないでしょうか。
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いかがでしたか? 今回の「屯する」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか?
時代が進む中で、言葉の持つ意味も少しずつ変化していきますが、本質的な部分に目を向ければ言葉の奥深さや味わいを感じることができます。
参考資料/
『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)
『新漢語林』(大修館書店)
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
