美人画と役者絵の代表作
重政の代表作として、勝川春章との合作『青楼美人合姿鏡(せいろうびじんあわせすがたかがみ)』(1776年刊行)が知られています。この作品は遊里の女性を描いた絵本で、当時の風俗を鮮やかに活写しています。
また、一枚絵としては『山王祭図』や揃物『浮世六玉川』などがあり、これらの作品は後世の浮世絵に大きな影響を与えました。
絵本・挿絵の分野での活躍
重政は、一枚絵だけでなく絵本や挿絵でも多くの業績を残しました。黄表紙(江戸時代の娯楽読物)には100点以上の挿絵を描き、勝川春章や山東京伝との合作も行っています。
挿絵画工としての評価も高まり、画料の高騰を招いたともいわれます。
門人の育成と北尾派の形成
重政は指導力にも優れ、多くの門人を育てました。中でも鍬形蕙斎(くわがた・けいさい/北尾政美)、山東京伝(北尾政演《まさのぶ》)、窪俊満(くぼ・しゅんまん)といった後に著名となる人物たちを輩出し、北尾派を確立しました。
重政の画風は広く継承され、江戸浮世絵の発展に寄与したといえるでしょう。
まとめ
北尾重政の画業は60年以上に及び、門人を多く育てたことで北尾派を形成し、後世の浮世絵文化に大きな影響を与えました。また、書道にも秀でた才能を持ち、画と書の双方で名を馳せた重政は、江戸文化を象徴する人物の一人といえるでしょう。
文政3年(1820)、82歳で没し、浅草善竜寺に葬られました。その多彩な作品群は、現代においても浮世絵史上重要な位置を占めています。
※表記の年代と出来事には、諸説あります。
文/菅原喜子(京都メディアライン)
肖像画/もぱ(京都メディアライン)
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引用・参考図書/
『日本大百科全書』(小学館)
『世界大百科事典』(平凡社)
『日本人名大辞典』(講談社)
『国史大辞典』(吉川弘文館)