美人画と役者絵の代表作

重政の代表作として、勝川春章との合作『青楼美人合姿鏡(せいろうびじんあわせすがたかがみ)』(1776年刊行)が知られています。この作品は遊里の女性を描いた絵本で、当時の風俗を鮮やかに活写しています。

また、一枚絵としては『山王祭図』や揃物『浮世六玉川』などがあり、これらの作品は後世の浮世絵に大きな影響を与えました。

北尾重政画
上記の『画本宝能縷』も勝川春章との合作
著者:勝川春章、北尾重政<北尾重政(1世 1739生)>//画 出版者:前川六左衛門 
天明6年(1786)刊(国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1286957/1/7 をトリミングして作成

絵本・挿絵の分野での活躍

重政は、一枚絵だけでなく絵本や挿絵でも多くの業績を残しました。黄表紙(江戸時代の娯楽読物)には100点以上の挿絵を描き、勝川春章や山東京伝との合作も行っています。

挿絵画工としての評価も高まり、画料の高騰を招いたともいわれます。

俳人のために作られた図鑑『誹諧名知折』の挿絵は北尾重政。
この本では「北尾紅翠斎」を号している。
著者:一陽井素外 編 [他] 出版者:須原市兵衛
安永10年(1781)刊(国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2540512/1/36 をトリミングして作成

門人の育成と北尾派の形成

重政は指導力にも優れ、多くの門人を育てました。中でも鍬形蕙斎(くわがた・けいさい/北尾政美)、山東京伝(北尾政演《まさのぶ》)、窪俊満(くぼ・しゅんまん)といった後に著名となる人物たちを輩出し、北尾派を確立しました。

重政の画風は広く継承され、江戸浮世絵の発展に寄与したといえるでしょう。

まとめ

北尾重政の画業は60年以上に及び、門人を多く育てたことで北尾派を形成し、後世の浮世絵文化に大きな影響を与えました。また、書道にも秀でた才能を持ち、画と書の双方で名を馳せた重政は、江戸文化を象徴する人物の一人といえるでしょう。

文政3年(1820)、82歳で没し、浅草善竜寺に葬られました。その多彩な作品群は、現代においても浮世絵史上重要な位置を占めています。

※表記の年代と出来事には、諸説あります。

文/菅原喜子(京都メディアライン)
肖像画/もぱ(京都メディアライン)
HP:http://kyotomedialine.com FB

引用・参考図書/
『日本大百科全書』(小学館)
『世界大百科事典』(平凡社)
『日本人名大辞典』(講談社)
『国史大辞典』(吉川弘文館)

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