久しぶりの為時に思うこと
I:さて、今週は久しぶりにまひろ(藤式部/演・吉高由里子)の父為時(演・岸谷五朗)が登場しました。越後の国司の任期を終えて、京都に戻ってきたということです。思えば、越後の任地に赴く際に、同行していた惟規(演・高杉真宙)が亡くなったわけです。孫の賢子(演・南沙良)が「本当にじじになっちゃった」というような発言をして為時を驚かせました。
A:時の移ろいを端的にあらわす場面でした。時の流れは確実に、潮目が変化しつつあることを教えてくれました。中級とはいえ貴族の娘賢子が一介の武者と親しくしている。「昔なら考えられなかったことを、あのふたりは軽々と乗り越えている」というまひろの台詞が身にしみます。もちろん、源氏や平氏の首領クラスはすでに貴族らと縁組するようになっています。
I:ひと昔前なら考えられなかったことが、当たり前になっていく。現代でもそういうことがありますよね。そういう潮流に納得できない、ついていけない、理解できない、そういう年代の人もいるのかもしれません。
A:そうやって、歴史は移ろい、新たな時代が動いていくのです。武者が跋扈する世が始まりつつあることを伝える役割を双寿丸(演・伊藤健太郎)が果たしていると言えるでしょう。
I:大宰府ではどういう事態が待ち受けているのでしょうか。
A:単なる貴族では太刀打ちのできない、武将でなければ対処できない事態。「運命」ということでしょうか。
I:「運命」といえば、今回もうひとつじんときたシーンがありました。清少納言(演・ファーストサマーウイカ)が「恨みを持つことで己の命を支えて参りましたが、もうそれはやめようと思います」という台詞を発しました。かつて同じようなことを隆家(演・竜星涼)が、兄伊周(演・三浦翔平)に言っていたような気がします。
A:隆家にとってもこの時期の大宰府入りは運命だったのかもしれないですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり