「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると⾔われています。
「脳トレ漢字」第220回は、「蔑む」をご紹介します。誰もが一度は耳にしたことのある言葉ですが、実は意外な語源を持っているのです。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「蔑む」とは何とよむ?
「蔑む」の読み方をご存知でしょうか? 「いやしむ」ではなく……
正解は……
「さげすむ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「他人を、自分より能力・人格の劣るもの、価値の低いものとみなす。見下げる。見くだす。」と説明されています。「よく知りもしないで人を蔑むのはよくない」「蔑んだような態度をとる」などのように使われる、「蔑む」。
「侮(あなど)る」「貶(おとし)める」「軽蔑する」などが類義語として挙げられます。現在では「さげすむ」と読みますが、かつては「さげしむ」と読むこともあったそうです。
「蔑む」の漢字の成り立ちは?
「侮蔑」「蔑視」などの言葉にも使われている、「蔑」。この漢字は、目が疲れて物がはっきり見えない状態を意味しているとされ、「暗い」「滅びる」という意味が含まれています。
ここから転じて、「ないがしろにする」「見くだす」という意味が生まれたのではないかと考えられます。
建築用語に由来する言葉
「見くだす」「馬鹿にする」という意味を持つ、「蔑む」。あまり使いたくない言葉ではありますが、元々は建築用語として使われていたことをご存知でしょうか? 「蔑む」という言葉は「下墨(さげすみ)」と呼ばれる、大工が柱の傾きを見るために使われる重りに由来します。
これが転じて、人を見くだすという意味として使われるようになったのです。また、「うだつが上がらない」という表現も、建築用語から生まれたとされます。「うだつ」とは、江戸時代から昭和初期頃まで、隣接する建物の間に作られた防火壁のことで、次第に装飾的な役割を果たすようになったそうです。
家の装飾に費用をかけられない貧しい人々にとって、うだつを上げることは困難だったことから、「出世しない」「ぱっとしない」という意味として使われるようになったと言われています。
ほかにも、梁(はり)の上に立てて棟木(むなぎ)を支える短い柱のことも「うだつ」といい、これが棟木に押さえつけられているように見えたことから、現在のような意味になったという説もあるそうです。
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いかがでしたか? 今回の「蔑む」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「衣食住」という言葉にもある通り、古来より住居は暮らしに必要不可欠なものでした。建築用語から生まれた言葉はほかにも複数あるため、ぜひ調べてみてください。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)