「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると⾔われています。
「脳トレ漢字」第214回は、「洒脱」をご紹介します。「酒」に見えますが、よく見ると「洒」という漢字が使われています。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「洒脱」とは何とよむ?
「洒脱」の読み方をご存知でしょうか? 「しゅだつ」ではなく……
正解は……
「しゃだつ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「俗気がなく、さっぱりしていること。あかぬけしていること。また、そのさま。」と説明されています。「彼は洒脱な人だ。」「洒脱な洋服を身にまとっている。」など、人やものの見た目を褒める際に使われますが、「洒脱な文章」や「洒脱な性格」など、表現や性格について言い表す際にも使われます。
「お洒落」「粋(いき)」などが類義語として挙げられる、「洒脱」。軽やかで洗練されていることを「軽妙洒脱(けいみょうしゃだつ)」と表現することもあるそうです。
「洒脱」の漢字の由来は?
では、「洒脱」の成り立ちについて見ていきましょう。まず、「洒」という漢字には「洗う」「すすぐ」という意味が含まれます。そして、「脱」という漢字には「やせる」「抜け落ちる」という意味が含まれているそうです。
そのため、「洒脱」は「洗練されている」「垢抜けている」という意味を持つようになったと考えられます。
「垢抜ける」はいつから使われ始めた?
垢抜けていることを指す「洒脱」。「垢抜ける」という表現はよく耳にしますが、これは一体いつ頃から使われ始めたのでしょうか? 「垢抜け」という言葉の歴史は意外と古く、室町時代前期に成立した能楽論書『風姿花伝(ふうしかでん)』に、拙い芸のことを「垢」に例えた記述が見られます。
また、芸能だけでなく、容姿や佇まい、趣味などが洗練されている状態を「垢の抜けた」という句で表現していたことが、『日葡(にっぽ)辞書』(江戸時代初期に、日本イエズス会が刊行した辞書)にも記載されているそうです。そして、江戸時代以降、現在のように「垢抜け」という表現が定着していったと考えられています。
長い歴史や面白い由来を持つ言葉はほかにもあり、「おなら」や「ヤバい」などが例として挙げられます。
「おなら」という表現は、室町時代に生まれたとされ、宮中に仕える女房たちによって使われていたそうです。「ならす(鳴)」の連用形の名詞化した「ならし」に接頭語「お」をつけて、自分たちにしか分からない隠語として使っていたと考えられています。
また、「ヤバい」は江戸時代から使われていたそうです。一説では、「矢場」と呼ばれた当時の射的場で違法な商売が行われており、役人に見つかったら危ないという意味から生まれた表現であると考えられています。
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いかがでしたか? 今回の「洒脱」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 会話の中で何気なく使っている言葉の中には、意外な由来を持つものが数多くあります。「あの言葉が?」と驚いてしまうものもあるので、気になった言葉の由来をぜひ調べてみてください。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)