「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると⾔われています。

「脳トレ漢字」第216回は、「会釈」をご紹介します。軽い挨拶という意味で使われることが多い、「会釈」。実は、ほかにも違った意味が含まれているのです。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。

「会釈」とは何とよむ?

「会釈」の読み方をご存知でしょうか? 「かいしゃく」ではなく……

正解は……
「えしゃく」です。

『小学館デジタル大辞泉』では、「軽くあいさつや礼を交わすこと。また、そのあいさつや礼を示す所作。」と説明されています。現在では、軽く頭を下げたり挨拶を交わしたりすることを指す表現として知られていますが、ほかにも複数意味があります。

例えば、「相手に心配りをすること」という意味です。福沢諭吉の自叙伝『福翁自伝』では、この意味で「会釈」が使われています。また、「事情を納得して理解すること」「事情を説明したりすること」などの意味もあり、打ち解けて愛敬のあることを「会釈をこぼす」と表現することもあるそうです。

どれも現在ではあまり使われなくなりましたが、古典文学などでは度々使われています。ほかにも、「会釈」と書いて「あしらい」と読むことがあり、「応対すること」「取り合わせ」「芸能(能や狂言など)の型」などの意味があります。

「会釈」の漢字の由来は?

会釈は、仏教語の「和会通釈(わえつうしゃく)」という言葉の略語です。「会」には、「出会う」「集まる」のほかに、「悟る」「理解する」などの意味があり、「釈」は「解決する」「明らかになる」という意味のほか、仏教に関する字として使われます。

そのため、仏教用語として使われるようになり、それが派生して「挨拶や礼をすること」という礼儀作法に関する意味が生まれたと考えられます。

和会通釈とは?

先述した通り、「会釈」という言葉は「和会通釈」という仏教用語に由来します。「和会通釈」とは、矛盾しているように見える教えを照らし合わせ、相違点を掘り下げた上で、その根底にある共通点を見出して真義を明らかにするという意味です。一見異なるように思える意見でも、注意深く考察すると共通している部分が見えてくることがあります。

これが転じて、「物事を注意深く見ること」という意味になり、やがて「相手の心情や事情を汲み取ること」「思いやること」という意味へと変化していきました。

現在では、「軽くあいさつをすること」「お辞儀をすること」という意味として使われることの多い、「会釈」。じつは、仏教の世界で重視されてきた教えが派生して生まれた言葉だったのです。

***

いかがでしたか? 今回の「会釈」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 仏教用語に由来する「会釈」には、相手を思いやるという意味が含まれていることが分かりました。

相手に親しみを込めて会釈をすると、清々しい気持ちで一日を過ごせそうですね。

文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB

参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)

 

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