「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると言われています。
「脳トレ漢字」第185回目は、「普請」をご紹介します。土木工事のことを意味する「普請」。仏教に由来する言葉であることをご存知でしょうか? 実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「普請」の正しい読み方とは?
「普請」の読み方をご存知でしょうか? 「ふせい」ではなく……
正解は……
「ふしん」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「家を建築したり修理したりすること」「道・橋・水路・堤防などの土木工事」と説明されています。
現在では、建物を建てることを「建築する」と言いますが、この「建築」は、比較的最近になって使われるようになった言葉だそうです。明治30年(1897)、造家(ぞうか)学会が「建築学会」と改称してから公認されたもので、建築学者の伊東忠太(いとう・ちゅうた)が、英語の「architecture」に対応する新語として提案した言葉であるとされます。それ以前は、土木工事全般を「普請」と呼んでいました。
また、「普請」は、禅寺で多数の僧に呼びかけて、堂塔建造などの労役に従事してもらうことも意味します。
「普請」の漢字の由来は?
では、「普請」の漢字の意味について見て行きましょう。「普」は「普く」と書いて「あまねく」と読み、「すみずみまで行きわたる」「もれなく」という意味を持ちます。また、「請」は「請願」や「要請」などの言葉にも使われているように、「頼む」「人を招く」という意味が含まれています。
そのため、あまねく人々に請い、労役に従事してもらうという意味として、「普請」が使われるようになったのではないでしょうか?
普請の歴史
現在では、中々耳にすることがない「普請」という言葉。しかし、先述の通り、「建築」という言葉が生まれる以前は、広く使われていた言葉であるとされます。多くの人々の力を借りて、労働作業を進めることを意味する「普請」。
室町時代までは、曝書(ばくしょ、書物を陰干しすること)や摘茶、掃除など、幅広い労役に用いられ、そこから転じて土木工事のことを指すようになったそうです。また、室町時代には「普請奉行」と呼ばれる人々が土木事業を担当しており、将軍や天皇の御所造営・庭の修築工事や庭中掃除に従事していたとされています。
戦国時代になると、戦国大名たちは領民に普請役を課し、堤防や用水路、橋や道路の建築などの大規模な工事に従事させました。戦いに備えて、城の普請も盛んに行われていたそうです。その後、江戸時代になると、建築を担当する作事奉行・土木工事を担当する普請奉行・幕府管轄の建造物を担当する小普請奉行など、細かく区分されることとなります。
現在のように、インターネットや便利な道具もなかった当時。普請に参加して、近隣住民たちと交流を図ることもあったそうです。
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いかがでしたか? 今回の「普請」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「普請」は、建物の建築や土木工事を意味するということが分かりました。戦国時代では、普請で活躍した領民は、領主から特権を与えられることもあったとされます。
当時の人々にとって、普請は人と交流を図る良い機会であり、生活を守るために欠かせない作業だったのではないでしょうか?
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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