かしづかれる立場の中宮も辛い
I:さて、多くの女房にかしづかれる中宮彰子ですが、藤壺のトップにもかかわらず、不自由な暮らしを強いられている様子が描かれました。浅葱色の布で洗顔しようとすると、左衛門の内侍が「中宮様は薄紅色がお好きだと申したであろう」と布の交換を促します。
A:後段で、実は「空の色が好き」と告白します。「なんと奥ゆかしい中宮彰子」という場面になりました。
I:女房らも気を遣っているんだろうと思いますが、かみ合っていないのですね。後々上東門院という院号を与えられて「大女院」と称される中宮彰子の若き日の一コマになります。
A:ということで、まひろ=藤式部は、藤壺に戻ります。「よく気が変わる女だな」という道長の台詞の響きがよかったですね。
I:そして、まひろの物語が一条天皇(演・塩野瑛久)の心をとらえます。道長はまひろに褒美として扇を与えます。そこに描かれていたのが、ふたりが出会った時の再現場面。何? 何? って、見ている方が狼狽して、完全にキュンとしてしまいました。まひろがうらやましい。さすが大石静さん、という場面になりました。私もこの扇が欲しい! と思いました。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり