まひろの鈍感力がたまらない
I:さて、まひろ=藤式部ですが、藤原公任(演・町田啓太)や斉信と会話を交わします。ふたりがやって来ると、まひろはすぐに扇で顔を半分隠しました。女房だなぁ、という感じで良かったです。しかし、よせばいいのに、ニヤッとして鋭い目つきでふたりを見ながら、「私のような地味でつまらぬ女はその才を頼りにするしかございませぬ」と言ってしまいます。過去に言われたことを決して忘れない、常に自分のことを卑下する人ってけっこういますよね。
A:こういう場合、得てして言った方は覚えていないことがままあります。ただ、同じように言った方は覚えていない発言に触発されて、成功するということもあったりしますから人のコミュニケーションは複雑です。
I:今週まひろに共感したのは、藤壺のように人が大勢いて、わさわさしている場所で執筆するのは嫌という場面でした。私も原稿を書く時は「静かなところ」「ひとりで」だったらはかどりますから。とはいえ、せっかく局まで与えてもらったのにもったいないとは思いました。まあでも、人間関係に煩わされるのは嫌かなぁ。
A:少し寝坊したまひろに対して「誰ぞの足をお揉みにいらしたのではないか」と言われていましたが、まひろは何を言われているのかピンとこない感じでした。この「鈍感力」がたまらないですね。
I:その鈍感力が発揮した形になったのが、出仕から10日にも満たないにもかかわらず、里下がりを願い出たところですね。道長がやや切れ気味に「局を与えたのに!」と気色ばんでいたのは面白かったです。ということで実家に戻ったまひろに対して、いと(演・信川清順)が「追い出されたのでございますね」と言ってしまいます。ここ笑っちゃいました。第31回で弟惟規(演・高杉真宙)が、まひろのことを「ややこしくって、根が暗くてうっとうしい」と分析していましたが、まさに、というシーンになりました。
A:そうした中で、まひろが収穫したばかりの野菜を見て「おおね、美味しそう」と口にします。七草がゆの際に使うような小さな大根でした。まひろの時代の大根の呼称は「おおね」だったことがわかるやり取りでした。「おおね」が「だいこん」と呼称が変化するのは、戦国時代前後のようです。いったいどういうきっかけで「だいこん」になったのか気になりますね。
I:だいこんとなってから、「大根役者」とか「大根足」とか比較的ネガティブな慣用句に使われることになってしまいます。本来は、漬物に、煮物に、おでんのタネにも、おろしても、という万能野菜なのに「大根役者」のかんむり扱いって、ひどいような気もします。
【かしづかれる立場の中宮も辛い。次ページに続きます】