新たな猫が登場

A:そうなんですよ。おそらくそこを意識しての演出だと思うのですが、今週放送の第27回に、新たな猫が登場してくるわけです。飼い主は、倫子の子である彰子です。

I:白黒ハチワレ、ひげちょびんの猫ちゃんでしたね!  小鞠(こまり)ちゃんっていうらしいんです。演じているのは、ひげちゃんという女の子の猫キャストさんだそうです。

A:何にも興味を示さない彰子が猫を膝にのせて撫でているのは、まさに親譲りを強調しているように思いました。母倫子もかつては「猫にしか興味がない」と思われていましたから。これはもう、血筋ということなのでしょう。

I:そうなってくると、気になるのは清少納言(演・ファーストサマーウイカ)の『枕草子』などに出てくる一条天皇(演・塩野瑛久)の愛猫「命婦の御許(みょうぶのおとど)」が出てくるかどうか、ですよ。

A:内裏には官位のある者しか入れないため、猫に従五位下の「命婦」という位を与えて入れた、という貴族猫ですね。一条天皇も宇多天皇に負けず劣らずの猫好き天皇として知られています。『枕草子』で紹介されているのは、命婦の御許のお世話係の女房が、腹立ちまぎれに命婦の御許に犬をけしかけたため、一条天皇が犬を罰してひどくかわいそうなことになった、という話です。

I:従五位下って、まひろ(演・吉高由里子)の父為時(演・岸谷五朗)と同じですね。このエピソードでは、どうやら清少納言はどちらかというと犬に同情的なんですよね。虐げられて弱っている犬をかくまったりして。

A:一条天皇はあまりに命婦の御許を大事にするあまり、命婦の御許が出産した時には、人間の子同様に産養(うぶやしない)の儀式を行なって盛大に祝ったそうです。藤原実資(演・秋山竜次)の日記『小右記』の長保元年(999)9月19日条にこのことが書かれていて、獣にこんな礼をとるとは、前代未聞、と例によって批判的です。

I:その辺り、ドラマで再現してくれたらいいなと期待してしまいます。大河ドラマでこんなに猫談義ができるとは思いもよらなかったです。小鞠、これからもちょくちょく登場して欲しいですね!

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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