数多の精緻な部品が組み合わさり時を刻む──その機構は変わらねど“令和の技術と精度”が息づく、現代日本の機械式の銘品を紹介する。
シチズン/シリーズエイト NA1004-10E
日常生活を豊かに彩る実用性を現代的な性能とデザインで追求
時計という道具の本質が、常に精確な時を刻み続けることとするならば、今や電子式に優るものはない。それでも機械式を手にする理由は何か。シチズンのシリーズエイトはそのひとつの答えである。
シチズンの歩みはいつの時代も実用性の追求にあった。国産腕時計として初の日付表示をはじめ、耐震装置や完全防水を開発。’70年代には日本のお家芸ともいえる先進技術を駆使し、世界初のチタンケースや光発電技術を実用化した。その歴史を踏まえ、アナログ技術ならではの永続性が再評価されている機械式にあらためて取り組んだのが本機だ。
実用時計としてまず重視したのは耐磁性だ。現代社会は多くのデジタル機器に囲まれ、それらが発生する高い磁気にさらされている。とくに機械式は精密機械であり、精度の維持に耐磁性は不可欠だ。そこで磁気を発する機器に1cmまで近づけても影響されない、よりレベルの高い第2種耐磁に強化した。さらに10気圧防水を備え、水濡れを気遣うこともない。
和を感じる現代デザイン
機能を内に秘め、シャープな面で構成されたデザインは現代性を漂わせる。とくに文字盤を取り巻くベゼルと呼ばれる縁の部分をあえて別体とし、異なる仕上げと色で個性を表現している。その境目も美しく、伝統的な組み木細工を思わせる。
黒いウレタンストラップは、通常はダイバーズウォッチのようなスポーツモデルに用いられるが、表面を滑らかに仕上げ、洗練されたスタイルと心地よい装着感を両立した。日々の生活でのさまざまな環境に応える、実用時計としても好ましい仕様である。
シチズンという名には、市民に愛され、市民に貢献するという企業理念が込められている。実用的な機械式腕時計は、生活者のより身近にあって時を刻み、安らぎと充足をもたらすのである。
※この記事は『サライ』本誌2024年6月号より転載しました。