「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると⾔われています。
「脳トレ漢字」第200回は、「懸想」をご紹介します。現代ではあまり使われない言葉ですが、かつては「懸想文売り」という職業まであったそうです。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「懸想」とは何とよむ?
「懸想」の読み方をご存知でしょうか? 「けんそう」ではなく……
正解は……
「けそう」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「懸想の気持ちをつづった手紙。恋文。」と説明されています。現代ではあまり使われなくなった、「懸想」。平安時代にはすでに使われており、恋い慕うこと・思いをかけることという意味として、江戸時代頃まで盛んに使われていました。
また、恋文のことを「懸想文(けそうぶみ)」と呼び、江戸時代には恋文に似せて縁起を祝う文が書かれたお札を配り歩く「懸想文売り」という職業があったそうです。懸想文売りは京都でよく見られ、このお札を買うと良縁に恵まれると考えられていました。
「懸想」の漢字の由来は?
「懸想」は、特定の人に強く思いを寄せるという意味です。「懸」には、「かける」「つりさげる」という意味が含まれ、「想」には「思い巡らす」「考え」という意味が含まれます。そのため、「思いをかける」「相手を想う」という表現として、使われるようになったと考えられます。
江戸時代の面白い職業
先述の通り、江戸時代には「懸想文売り」という、恋文に似せた願掛けのお札を売り歩く職業が存在しました。懸想文売りは、正月という短期間にのみ活動していたため、当時としても珍しい職業だったかもしれません。町人文化が花開いた江戸時代には、このような風変わりな職業がたくさんあったのです。
例えば、「猫のノミ取り」が挙げられます。その名の通り、猫に付着したノミを除去する職業です。江戸時代中期頃から、階級を問わず多くの人々がペットを飼育するようになりました。特に人気のあったペットは、犬や猫、金魚などで、餌やりや飼育方法についてまとめた飼育書まで販売されていたのです。
その中でも、愛猫家たちは自分の猫をノミ取り屋に連れて行き、ノミを除去してもらっていたという記録が残っています。洗った猫を狼などの毛皮で拭き、ノミを毛皮に移動させて綺麗にしていたそうです。
ほかにも、「損料(そんりょう)屋」という職業も存在しました。損料屋は、現在で言うレンタル業者のようなもので、日用品から嗜好品に至るまで、様々なものを貸し出していたそうです。狭い長屋に住む庶民の中には、スペースを確保するために物を置かず、必要な時に損料屋でレンタルする人もいたとされます。
人気があったのは鍋や釜、布団などの日用品で、旅道具一式や着物もレンタルできたそうです。また、地方から出稼ぎにやってきた人でも、生活必需品を損料屋で借りれば、すぐに江戸で生活できたため、損料屋は多くの人々から重宝されていたとされます。
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いかがでしたか? 今回の「懸想」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 江戸時代には、珍しいものから現代でも見られるようなものまで、様々な職業があったことが分かりました。
江戸時代に見られた職業の中には、現代でも重宝されそうなものがたくさんあるかもしれませんね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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