正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。Google 先⽣やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中身については⼗分な吟味が必要な時代になっております。
あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。「脳トレ漢字」第199回は、「些か」をご紹介します。程度が少ないことを意味する「些か」。少し、古風な言い回しかもしれませんね。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「些か」とは何とよむ?
「些か」の読み方をご存知でしょうか? 「わずか」ではなく……
正解は……
「いささか」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「数量・程度の少ないさま。ほんの少し。」「かりそめであること。」と説明されています。最近はあまり聞かなくなりましたが、古典作品ではよく使われている言葉です。「いささかも~ない」で、「ちっとも~ではない」という意味になります。
また、「些か」のほかに「聊か」と表記されることもあるそうです。
「些か」の漢字の由来は?
「些細(ささい)」や「些末(さまつ)」という言葉にも使われている、「些」。「ほんの少し」「少ない」という意味が含まれています。そのため、程度が少ないこと・わずかであることを「些か」と表記するようになりました。
春の万葉歌
「些か」は非常に長い歴史を持つ言葉で、奈良時代にはすでに使用されていました。歌人・大伴家持(おおともの・やかもち)がまとめたとされる歌集『万葉集』にも、「些か」が使われている和歌が収められています。
それが、「些かに 思ひて来しを 多祜(たこ)の浦に 咲ける藤見て 一夜経ぬべし」という和歌です。現代語訳すると、「ほんの少しと思って訪れたが、見事に咲いている多祜の浦の藤を見ると、一夜を過ごしてしまいそうだ」という意味になります。
天平勝宝2年(750)の4月、大伴家持を含む役人たちは、現在の富山県氷見市にあった布勢の湖を訪れたそうです。そこには、見頃を迎えた藤の花が見事に咲き誇っていました。
仕事に追われ、多忙な毎日を過ごす役人たちにとって、湖岸に美しく咲いている藤の花は、心を打たれるほど素晴らしい光景だったのではないでしょうか?
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いかがでしたか? 今回の「些か」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「些か」は、数量や程度の少ないことを意味する言葉で、古くから使われていたことが分かりました。
桜の季節が過ぎ、幻想的な藤の花が見頃となる時期がやってきました。毎日忙しいという方も、美しい藤の花を見て心を落ち着かせる時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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