正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。
Google 先⽣やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中⾝については⼗分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。
「脳トレ漢字」第197回は、「誹る」をご紹介します。他人を悪く言うという意味である「誹る」。比較的よく耳にする言葉かもしれません。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「誹る」とは何とよむ?
「誹る」の読み方をご存知でしょうか? 「はかる」ではなく……
正解は……
「そしる」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「他人を悪く言う。非難する。」と説明されています。「陰で相手のことを誹る」「誹りを受けるようなことはしていない」などのように使われる、「誹る」。悪口や誹謗中傷、憎まれ口などが、類義語として挙げられます。
「誹る」の漢字の由来は?
「誹」という漢字は、「ごんべん」に「非」が合わさって出来ています。「非」には、「否定する」「悪く言う」という意味が含まれるため、「誹」も同じような意味を持つようになったと考えられます。
佐久間象山の名言
「誹る」とは、他人を悪く言うことであると分かりました。どのような内容であっても、自分のことを悪く言われるのは気分の良いものではありませんね。しかし、日本を開国へと導いた幕末の思想家・佐久間象山(さくま・しょうざん/ぞうざん)は、このような名言を残しています。
それは、「誹る者は汝の誹るに任せ、嗤(わら)う者は汝の嗤うに任せん。天公本我を知る。他人の知るを覚めず。」というものです。現代語訳すると、「私のことを非難する者も、嘲笑する者もそのままにしておこう。天だけは本当の私を知っているから、他人に理解されなくても構わない。」という意味になります。
江戸に遊学し、私塾を開いた佐久間象山。天保11年(1840)の「アヘン戦争」に衝撃を受けた象山は、海防の必要性を痛感し、自ら西洋砲術を学びました。後に、西洋砲術家として広く知られるようになった象山のもとには、勝海舟や吉田松陰、坂本龍馬などの、時代を先導する秀才が集まったのです。
海防の強化と、開国の必要性を説き続けた象山。元治元年(1864)、幕命を受けて上京した象山は、そこで公武合体と開国進取について説きます。これが尊王攘夷派(天皇を敬い、外国人を追放しようとする立場)の怒りを買い、暗殺されてしまうのです。
海外情勢について研究し、海外への密航まで考えた象山の立場は、当時としてはかなり先鋭的なものでした。そのため、周囲からなかなか理解されず、時にはひどい誹りを受けることもあったと考えられます。しかし、象山は最後まで開国を諦めませんでした。
そこには、「誹る者は汝の誹るに任せ、嗤う者は汝の嗤うに任せん」という思いがあったのかもしれません。
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いかがでしたか? 今回の「誹る」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 自分の意思を貫こうとする時や、新しい一歩を踏み出す時には、誰かから誹られることもあるかもしれません。否定されると、自信をなくしてしまいそうになりますね。
しかし、そういう時こそ、強い気持ちで自分らしく生きることで、新たな道が開けてくるのではないでしょうか?
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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