正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。
Google 先生やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中身については十分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。
「脳トレ漢字」第152回は、「音り」をご紹介します。「音」といえば、音楽や物音などをイメージしてしまいますが、ほかにも意味があるのです。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「音り」とは何とよむ?
「音り」の読み方をご存知でしょうか? 「おとり」ではなく……
正解は……
「たより」です。
「音」には、音楽や物音以外にも意味があり、『小学館デジタル大辞泉』では、「便り、音信」とも説明されています。全く連絡がないこと・音信不通であることを「音沙汰がない」と表現しますね。「音」は本来、「物の振動によって生じた音波」「人の口から発せられる言葉を構成するもの」という意味です。
音が鳴る・音が聞こえるということが、やがて人や季節の訪れを知らせるものという意味へと変化していったと考えることができます。
「音り」の漢字の由来は?
便りや音信という意味を持つ「音り」。先述の通り、「たより」という言葉に「音」という漢字が当てられた理由として、音が鳴るということが人や季節の訪れを知らせる働きをしていたからということが考えられます。
また、「音」にはうわさや評判という意味もあり、古典の世界ではそうした意味で使われることも多いです。
「音に聞く」とはどういう意味?
小倉百人一首の72番に、「音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ」という歌があります。この歌の作者は、後朱雀天皇の皇女に仕えた人物で、女房三十六歌仙のうちの一人です。女房三十六歌仙には、紫式部や清少納言、小野小町なども含まれています。
では、この歌はどのような意味なのでしょうか? 先述の通り、「音」にはうわさや評判という意味も含まれているため、「音に聞く」は「評判高い」という意味になります。また、高師の浜は、現在の大阪府堺市から高石市に位置していた浜です。
これは、「涙で袖を濡らすことになるといけないから、浮気者として有名なあなたの言葉なぞ気に留めないようにします」と、恋愛好きな男性からの誘いを見事に切り返した歌なのです。高師の浜の寄せ返す波のことを、浮気っぽい人の不誠実な態度にかけており、かなりレベルの高い和歌であることがわかります。
優れた歌人という「音」をますます強めるきっかけにもなったのではないでしょうか?
***
いかがでしたか? 今回の「音り」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「音」という漢字には、便りやうわさ、評判という意味があることがわかりました。
梅雨が明けると、いよいよ夏本番になりますね。皆さまも、新しい季節の「音り」を、ぜひ感じてみてくださいね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB