「内覧」の前例を探し出した定子
I:関白道隆の病状が深刻だということで、伊周と定子(演・高畑充希)が、伊周に「内覧」の宣旨が下されるよう道隆にお願いしようと言う相談をしていました。
A:劇中でも解説されていましたが、内覧というのは、天皇に奏上される文書を事前に確認できる権限を持つことです。関白にも同様の権限がありますが、伊周はまだ関白になれるような地位にはありません。
I:定子は、「20年前にも~」ということを言っていましたが、この20年ほど前というのは、道隆らの父兼家(演・段田安則)世代の話で、藤原師輔の長男伊尹が亡くなった後に弟の兼通があとを継ぐことになった際の話です。
A:劇中では中宮定子が内裏の中の文書を探し出して前例があることを確認しました。文書には、「天禄三年」とありました。西暦972年のことです。劇中の時代から確かに20数年前。藤原伊尹が重い病に罹患し、弟である中納言兼通が「内覧」の宣旨を得たという文書で、「藤原朝臣兼通」という宛名がありましたね。
I:また、画面を静止して確認しましたね(笑)。
A:前週に「脚本に無駄がない」ということを言いましたが、道隆が主導した改元のエピソードもまた魅せてくれました。「正暦」から「長徳」への改元だったのですが、この改元については藤原実資(演・秋山竜次)が「長徳は長毒に通じる」と難色を示していたことです。これはしっかり日記『小右記』にも「〈長徳、俗忌有るに似る。長毒と謂ふべきか。又、日本の年号、徳字、只、天徳なり。彼の年、疫癘有り。又、内裡焼亡有り〉てへり」とありますから、実資は本気で怒っていたようですね。
A:藤原実資は日記ではあらゆることに不満を表していますが、リアルな人付き合いではうまく処していたようです。
I:表面上はうまく付き合っていて、裏では不満を日記に書き連ねる。私はあまりリアルでは付き合いたくないですね(笑)。現代でいったらSNSなどで不満ばかりを書いているってことですよね。
A:まあ、その『小右記』が当時のリアルを伝えてくれるわけですから。
【源明子が抱いている子供は後の頼宗。次ページに続きます】