建造物や美術品はもちろんのこと、考古遺物にまで、人の営みのあるところには色があふれています。
その色も、単に赤・黄・青などの「いろ」にとどまらず、素材のもつ質感や微細な構造がかもす「つや」、それらの組み合わせがつくる「かたち」。視点を広げると色はさまざまな様相をみせます。
国立歴史民俗博物館の「企画展示 歴博色尽くし」展は、色を広範な視点でとらえた展覧会です。(3月12日~5月6日)
本展の見どころを、国立歴史民俗博物館の広報サービス室にうかがいました。
「本企画展示は“いろ・つや・かたち”、すなわち色彩や質感、微細な構造をテーマに館蔵資料を取り上げ、歴史学・考古学・民俗学・自然科学の観点から色と人間とのかかわりについて考えます。権威やおそれの象徴としての色、職人らによって生み出される技芸としての色……「色」というキーワードから、資料の様々な見方を引き出します。
コーナー1では、“2棟の建築彩色模型 ~あなたがたはなぜ、歴博に?~”として建造物彩色を取り上げます。
経年劣化や剥落などで失われた文化財建造物の彩色が、実物大の復元模型によって蘇りました。
コーナー2では、“身にまとう色 ~染織工芸の色と模様~”として染織工芸を取り上げます。
飛鳥・奈良時代までの古い染織品の断片を上代裂(じょうだいぎれ)といい、いにしえの染と織の技術を今に伝える貴重な資料です。
コーナー3では、“ふたつの「赤絵」 ~色がなす文化、文化がなす色~”として浮世絵版画を取り上げます。
江戸時代、疱瘡にかかった子どもの見舞いに贈られた疱瘡絵は「赤絵」とも呼ばれ、魔除け・厄除けの意味をもつ赤一色で摺られています。
もう一つの「赤絵」は、維新後、洋風建築などで変貌する風景や風俗が描かれた開化絵です。赤という強烈な色彩で開化の祝祭的なムードを表出しています。
コーナー4では、“漆工芸にみる色彩 ~蒔絵・螺鈿・色漆~”として漆工芸を取り上げます。
蒔絵や螺鈿が生み出す微妙な色合いを出すため、どういう技術的な工夫がなされたのかを探ります。
コーナー5では、“古墳の彩り ~「もの」と「空間」~”として考古遺物を取り上げます。
古墳時代に、日本列島の社会は大きく変化していきますが、この変化の時代にあって、色彩も造形も多様な展開をみせます。社会の変化を色彩から眺めます。
コーナー6では、“鉄の隕石で作られた刀剣 ~ウィドマンシュテッテン構造が生み出す隕鉄の質感~”として隕鉄剣を取り上げます。
世界で唯一、隕鉄だけを使い、日本刀と同じ折り返し鍛錬の技法で作られた脇差も展示します。
人間の営みに深くかかわっている「色」……考えれば考えるほど不思議な言葉を、本展示をきっかけに考え楽しんでいただければと思います」
古代から現代まで、人間にとって「色」は永遠の関心事。ぜひ会場でご鑑賞ください。
【開催要項】
企画展示 歴博色尽くし
会期:2024年3月12日(火)~5月6日(月・休)
※会期中展示替えあり
(前期:~4月7日(日)、後期:4月9日(火)~)
会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A
住所:千葉県佐倉市城内町117
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
公式サイト:https://www.rekihaku.ac.jp
館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし4月29日は開館)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝