高杉真宙の子孫が岡本信人?
I:『光る君へ』の劇中で、惟規の大学入りを激励する場面から約180年後の一族に思いを馳せたということですね。
A:はい。実は、藤原邦綱の娘輔子にも興味深いエピソードがあります。輔子が嫁いだのは平清盛五男の平重衡(たいらのしげひら)です。
I:南都の焼き討ちで東大寺の大仏、大仏殿を消失させた張本人ですね!
A:はい。重衡はその後、一ノ谷の合戦で源氏に捕らえられ、鎌倉に送られます。一方妻の輔子は壇ノ浦まで平家軍と行動をともにし、安徳天皇、二位尼らが入水したのと同時に海中に飛び込みますが、源氏に引き揚げられます。平家滅亡後、重衡は南都の要請で引き渡されるため鎌倉から奈良に向かう途中で斬首されますが、斬首の直前に、輔子との再会を許されました。
I:『平家物語』名場面のひとつですね。涙なしでは読めないくだりです。
A:『光る君へ』第9回、為時、まひろ、惟規、いとの場面から、彼らの子孫が摂関家の家司となり、平清盛に接近し、子孫のひとりが壇ノ浦で入水する。 そんな歴史をたどることに言及してみました。
I:自分たちの180年後の子孫たちがどうなってるのか……。そんなことも空想してしまいますね。
A:ちなみに「為時、惟規」の子孫である藤原邦綱が登場した大河ドラマが2012年の『平清盛』。岡本信人さんが演じています。
I:高杉真宙さんの子孫が岡本信人さんとは感慨深いですね。
A:大河ドラマ11作に登場しているいぶし銀俳優岡本信人さん、1979年の『草燃える』では歌人の藤原定家を演じていました。藤原定家は、道長六男の藤原長家の系統になります。私は、『光る君へ』9回を見て、すぐさまNHKオンデマンドで『平清盛』の藤原邦綱の登場回を見てしまいました。惟規の子孫が時代の荒波を駆け抜け「生き続けた」ということになんだか感動しました。これも『光る君へ』効果です。
I:やっぱり大河ドラマで、映像化されると、輪郭がくっきりとしてきますね。邦綱の娘輔子は2005年の『義経』で戸田奈緒さんが演じていました。
A:時代の輪郭をより浮き彫りにするという意味では、やっぱり古代史大河ドラマって必要かもしれないですね。
I:古代史といってもどこがいいのか? 今度、じっくり考えてみませんか?
A:ですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり