葬送の地 鳥辺野とカラス
I:さて、まひろ(演・吉高由里子)や道長(演・柄本佑)らと交流のあった散楽団員で盗賊の直秀(演・毎熊克哉)が鳥辺野(とりべの)という地に向かったということで、まひろと道長が向かいます。ここは平安京における境界の地ということになりますでしょうか。
I:道長とまひろが直秀を埋葬するために、土を掘り越していました。この撮影は真夏だったといいます。けっこうハードな撮影だったようですね……。ここで直秀が退場するわけですが、ちょっと早いなと感じています。もう少し見たかったです。
A:そうですね。いわゆる貴族以外のキャラということで、重要な役割でしたからね。しかし、この場面、カラスが印象的にして映し出されていました。端的に言うと遺体を鳥たちがつつくという「鳥葬」の場ということで鳥辺野なわけですが……。
I:道長が直秀の亡骸に手をあわせていたのが印象的です。死穢(しえ)を超越した場面になりましたし、道長の生涯で、「鳥辺野」がかかわることが出てきますから、そういうのが描かれるのかどうか気になっています。
A:そういえば、第6回で、道長からまひろに求愛の和歌が送られましたが、それに対するまひろの返歌・返事がないままに時が過ぎています。
I:確かに。当欄では何度も繰り返しますが、道長とまひろの恋の行方は、『源氏物語』成立にかかわる大問題ですから、それがどのように描かれるのかが注目される部分ですね。
A:紫式部と道長の交流は『紫式部日記』などに断片的に記されているのですが、劇中の若い頃のふたりの描写を見ていると、大石静さんの「脚本マジック」って凄いなと感じる部分があります。
I:なるほど。それは今後物語の進展にあわせて徐々に言及していきましょう。さて、今週もまひろの女心がいじらしいと思える個所がありました。道長が屋敷まで送っていくと申し出たにもかかわらず、自分の屋敷が源倫子の住む土御門殿の近所なのを憚って、断りました。
A:道長に対する源倫子(演・黒木華)の恋心を察知したのではないでしょうか。
I:なんといじらしい……。
A:いずれにしても、道長、倫子、まひろをめぐる人間模様がどう描かれていくのか気がかりです。いったいどんな物語が紡がれるのでしょうか。
I:切ないような、歯がゆいような、ですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり