明治末から昭和初期に活躍した日本画家・木島櫻谷(このしま・おうこく)は、独特な色感の絵具を使い、顔料を厚く盛り上げ、筆跡を立体的に残した油彩画のような筆致に挑戦しました。

大正中期、大阪茶臼山に建築された住友家本邸を飾った櫻谷の「四季連作屏風」にも、油彩画を研究した絵具の扱いや景物を大胆に切り取った構成などに、櫻谷の斬新で意欲的な取り組みが見て取れます。

木島櫻谷《柳桜図》(左隻)大正6年(1917) 泉屋博古館東京蔵

泉屋博古館東京で開催の「ライトアップ木島櫻谷―四季連作大屏風と沁みる「生写し」展は、櫻谷作品の特質に焦点をあてた展覧会です。(3月16日~5月12日)

本展の見どころを、泉屋博古館東京館長の野地耕一郎さんにうかがいました。

「明治末から昭和初期の京都画壇で一世を風靡した日本画家・木島櫻谷は、なにより動物画に秀でていました。櫻谷の描いた動物たちはリアルなだけでなく、折節にみせる表情がどこか人間的な感情を溶かし込んだように生き生きと輝き、観る者の心に沁みます。

木島櫻谷《獅子虎図屏風》(右隻) 明治37年(1904) 個人蔵

そうした櫻谷画のリアリティーの源は、江戸時代中期(18世紀)京都で活躍した絵師・円山応挙(1733~1795)によって編み出された「生き写し」(写生)という方法です。自然や事物を生き生きとありのままに描く写生表現は、応挙以降、門下の円山派の絵師や応挙の画風に学んだ呉春を祖とする四条派にも伝えられ、近代にも大きな影響を与えました。

円山応挙《双鯉図》江戸・天明2年(1782) 泉屋博古館蔵

櫻谷もその例外ではありませんが、ここでは親和的表現に特色の動物画に焦点をあて、応挙はじめ先人画家たちによる動物表現と比較しながら櫻谷の動物画の特質をライトアップする展示です。

木島櫻谷《葡萄栗鼠》(部分)大正時代(20世紀) 泉屋博古館東京蔵

また、大正中期に住友家本邸を飾った木島櫻谷の「四季連作屏風」の全点公開も見逃せません。円山四条派の写生だけではなく、琳派や狩野派の表現などまで自在にあやつることができた櫻谷の魅力が満載の展示です」

木島櫻谷《燕子花図》(左隻)大正6年(1917) 泉屋博古館東京蔵

櫻谷の「生写し」の描写にググっと迫る展覧会です。会場でじっくりご堪能ください。

【開催要項】
ライトアップ木島櫻谷―四季連作大屏風と沁みる「生写し」
会期:2024年3月16日(土)~5月12日(日)
会場:泉屋博古館東京
住所:東京都港区六本木1-5-1
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
公式サイト:https://sen-oku.or.jp/tokyo/
開館時間:11時~18時、金曜日は~19時(入館は各閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし4月29日、5月6日は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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