初代江戸城の大きな特徴は3つ
千田教授によれば、明らかになった初代江戸城の大きな特徴は3つある。
その1。天守は単独でなく、大天守と複数の小天守を多聞櫓で連結した連立式天守であった。本丸に攻めこまれても、なお天守群で戦いを続けられる最強の構えといえる。関ヶ原の戦いのあと、池田輝政が大改修した姫路城もこの連立式天守の構造だった。
その2。本丸の南側に、城壁を外側に張り出して互い違いに出入り口を連続させた外枡形を5つ備えていた。鉄壁の防御を誇る一方、城門の開閉を敵に察知されにくいため出撃も容易。加藤清正の熊本城が、同じように5連続枡形を備える城だった。
その3。本丸北側の出入り口に、三重構造の馬出しを配備していた。馬出しは、甲斐の武田氏、関東の北条氏が戦国時代から逸早く用いたもので、家康自身、戦を通してその有効性をよく認識していた。
すなわち、家康の築いた初代江戸城は、堅固を誇った東西の城の特徴を併せ持つ「日本最強の要塞」だったのである。慶長12~14年といえば、大坂冬の陣(1614)の5年ほど前。家康は戦への備えを強く意識していたのだろう。
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なお、発売中のサライ・ムック『サライの江戸 江戸城と大奥』では、今回明らかになった家康時代の初代江戸城を3DCGで再現。のちに2度造り替えられた歴代天守と比較しながら徹底解剖している。さらに、将軍や御台所の一日、知られざる大奥女性の生活など、最新の研究を網羅。まさに、現在判明している江戸城のすべてがわかる一冊である。
江戸城のすべてがわかる本
取材・文/矢島裕紀彦 CG制作/中村宣夫